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都市型の地域医療に必要なエキスパートを育成する

都市型の地域医療に必要なエキスパートを育成する

横浜市立大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
主任教授(おりだて・のぶひこ)

1988北海道大学医学部卒業。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター客員講師、
北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野准教授などを経て、
2013年から現職。

 都市型の地域医療への貢献を目指し、専門性の高いエキスパートの育成に取り組む横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科。症例数が少ない疾患に対し、患者のQOLを見据えた治療を行う医局での取り組みから、地域医療における役割まで、折舘伸彦主任教授に話を聞いた。

—医局の特徴は。

 現在、80人の医局員で構成されています。比較的若い医師が多いため、若手医師育成に向けた教育プログラムとして「都市型の地域医療」を目指した指導を行っています。

 私は、医師に求められる役割には大きく二つあると考えています。地方であれば広い領域に対応できるオールラウンドプレイヤーな医師が求められますが、都市部で求められるのは、同じ診療科の中でも専門性の高いエキスパートです。

 耳鼻咽喉科は「新生児から高齢者まで、男女共に診療の対象となる」という特徴があります。これらを踏まえて都市型の地域医療を行うためには、より広い視野を持ち、専門性の高い臨床と研究を進めることが不可欠ではないでしょうか。そのための人材育成は、新しい治療法の発見、地域の貢献にもつながっていくはずです。

 耳鼻咽喉科は、耳、鼻、口腔、咽頭、喉頭、頭頸部と領域が細分化され、さらにそれぞれに腫瘍という分野もあります。特に腫瘍については、部位によって進行の仕方、治療法、予後が大きく変わる上、領域ごとの症例数が少ないため、エキスパートが非常に少ない。

 当医局では希少な症例データも集約し、より専門的なスキルを磨くための体制を整えて、若手の育成に取り組んでいます。

—頭頸部腫瘍について。

 唾液腺の腫瘍は組織分類が非常に多く、耳下腺だけでも30ほどに分類され、すべて予後が違います。これまでは手術による腫瘍摘出と放射線治療がスタンダードな治療法でしたが、現在は、唾液腺腫瘍の新しい治療法が提案できるところまで進んでいます。

 現在、私たちが研究を進めているのが、咽頭がんとヒトパピローマウイルス(HPV)との関連です。咽頭がんは上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんと3領域に分かれ、現在のところ中咽頭がんだけはHPVとの関連があることが判明しています。中咽頭がんには性差もあり、男性と女性では3対1で男性が多い。HPVが発見される割合も、男性3対女性1なのです。当医局では中咽頭がんとHPVとの関連について、さらなる研究を進めているところです。

 当医局には頭頸部腫瘍の専門医も在籍していますので、今後さらに、頭頸部腫瘍に対する、適切な診断方法や治療法を確立させていきたいと考えています。

—今後の展望は。

 近年は「人工内耳」による難聴の治療も進んでいます。聴力は、人の発育や成長に、大きな影響を与える機能です。現在は新生児に対するスクリーニングが行われています。先天的、後天的にかかわらず、専門的な機関での治療とリハビリテーションによって「難聴は克服の可能性がある」という、啓発も必要だと考えています。

 また、当医局や横浜市立大学附属病院、その関連医療機関で現在取り組んでいるのが、頭頸部腫瘍に対する、専門家チームによる集学的治療です。頭頸部腫瘍は、腫瘍だけを治療しても患者さんのQOLを維持することが難しい。放射線治療は歯に影響しますし、口腔から咽頭までは嚥下(えんげ)機能にも大きく影響します。

 頭頸部には、食べる、話す、呼吸するという、人としての大事な機能があります。これらを維持し、患者さんのQOLの維持に貢献できるよう、さまざまな取り組みをもっと広げていくことも、当医局の役割だと考えています。

横浜市立大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
横浜市金沢区福浦3─9
☎045─787─2511(代表)
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~jibika/

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