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遺伝子細胞療法で悪性脳腫瘍に挑む

遺伝子細胞療法で悪性脳腫瘍に挑む

脳神経外科学 難波 宏樹 教授(なんば・ひろき)
1979年千葉大学医学部卒業、同脳神経外科入局。米国立衛生研究所、
千葉県がんセンターなどを経て、1999年から現職。

 教授として教室をけん引して21年目。30年以上にわたり、悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療の研究を続けてきた。今、臨床への応用に挑んでいる。

―30年以上にわたり脳腫瘍の治療研究を継続。

 脳腫瘍は大きく二つに分けられます。一つは脳の膜などから発生する腫瘍。髄膜腫や下垂体腺腫などで多くは良性です。もう一つが悪性腫瘍。脳の中にできる神経膠腫(グリオーマ)です。

 グリオーマは正常脳との境界があいまいで、きれいに摘出するのは不可能。腫瘍のコアな部分だけ取って放射線や抗がん剤に進むのが標準的治療です。現状、最も悪性度の高い膠芽腫では平均余命は1年半ほど。再発により治療成績はなかなか向上しません。今世紀に残された最も悪性な腫瘍の一つではないでしょうか。

 グリオーマは脳の中で浸潤し広がる性質があります。それを追跡して根治するには―。脳の神経幹細胞に遺伝子を導入し、腫瘍に送り込んで増殖を抑制しようというのが、われわれが取り組む遺伝子細胞療法です。

 今、臨床応用に進む段階です。神経幹細胞ではなく、骨髄などから容易に採取できる間葉系幹細胞を運び屋にする研究を重ねてきました。その一つの完成形がMuse細胞。東北大学の出澤真理教授が発見したこの細胞を使った共同研究で、極めて満足のいく結果が出たのです。

 本気で臨床応用まで考えているのは私たちくらいでしょう。どうにか実現したいのですが、研究費の調達や企業との連携など、違う次元の壁があります。

 iPS細胞もそうですが、細胞療法自体のハードルはまだ高い。安全な治療法として確立できると確信しているのですが、一筋縄ではいかない。何とか打破したいと、みんなで頑張っているところです。

―もう一つの特徴である「機能的脳神経外科」について教えてください。

 パーキンソン病患者を主な対象に、脳に電極を埋め込んで電気刺激で治療する外科手術を行っています。この治療で走れるまでに回復する患者さんもいます。

 機能的脳神経外科はうちで40年ほど続く研究分野。テーマの一つに「精神疾患に対する脳深部刺激」があります。例えば強迫神経症は、脳のある部分を刺激することで改善することがあります。ぜひ臨床に応用したいと杉山憲嗣准教授が取り組んでおり、精神科のドクターも前向きに考えているところです。

 いまだに精神疾患に対する手術は認められないという風潮がありますが、うちがやらなければどこがやるんだという思いがあります。実現すべき時期に来ていると考えています。

 来年1月には、杉山准教授が会長を務める「第59回日本定位・機能神経外科学会」も開催されます。これを一つのきっかけとして、少しでも前進していけたらとの思いがあります。

 そのほかの臨床では、頭蓋底手術も得意分野としています。脳の深い部分にある腫瘍を扱う手術のエキスパートがいますので、広範囲から患者さんが来られます。そして血管内治療。これも重点的に人を育てています。

―9月開催の「第24回日本脳腫瘍の外科学会」の学会長です。コンセプトは。

 脳腫瘍は外科だけで治るものではありません。世の中だんだん切らない方向に向かっている。分子標的薬などもある中、どこまで手術をすべきか―。外科治療の意義を改めて考える内容にしたいですね。

 外科医の役割はどんどん変化しています。放射線治療などを専門とし、手術をしない脳外科医も増えています。そういう成績も持ち寄っていただき、脳腫瘍を多角的に理解する場になればいいですね。

浜松医科大学 脳神経外科学
浜松市東区半田山1―20―1
☎053―435―2111(代表)
https://www.hama-med.ac.jp/education/fac-med/dept/neurosurgery/

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