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遠隔外来をきっかけに オンライン診療の実現へ

遠隔外来をきっかけに オンライン診療の実現へ

東北大学大学院医学系研究科 
中里 信和 教授(なかさと・のぶかず)
1984年東北大学医学部卒業。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学、東北大学医学部脳神経外科、
広南病院副院長などを経て、2010年から現職。

 全国の医学部でもてんかん分野に特化した教室は数少なく東北大学の実績は高い評価を受ける。中里信和教授は2019年5月、オンラインによるセカンドオピニオンを開始。医師不足など東北の医療課題解決の糸口ともなる遠隔医療に手応えを感じている。

―オンラインセカンドオピニオン開始のきっかけは。

 2011年の東日本大震災の後に始めた遠隔てんかん外来がきっかけです。もともとは震災の復興支援に役立ててほしいと、米アーカンソー州の友人である医師がハイビジョンテレビによる遠隔会議システムを無償で提供してくれ、これを気仙沼市立病院と結び診療開始。いざ診察になると患者さんも私も画面を介していることも忘れ、互いの話に没入できます。オンラインでの診察は十分可能だと確信しました。

 現在も診療を続けていますが、日本の医師法では診療は対面が基本ですので、気仙沼側には患者さんの横に医師が同席しています。

 震災後、東北では医師確保がますます難しくなっています。当教室にも東北各地から医師派遣の要望があります。しかし、てんかん専門医は全国的にも数少なく、教室としても期待に沿えていないのが現状です。

 そんな時に知ったのがメドレー社のオンラインによる診療システム。患者さん側にパソコンやスマートフォンがあれば受診が可能ですので、利用しやすいと考えました。

 現状では医師のオンライン診療には多くの制限があります。「再来では条件付き可能だが新患では不可」などです。厚生労働省に問い合わせたところ、新患の場合「診察」は不可ですが「セカンドオピニオン」なら可能ということが分かったのです。ただし自由診療(私費)という条件です。そこで2019年5月から本格的にスタートしました。

―手応えはいかがでしょう。

 患者さんはコンスタントに増えています。費用は1時間4万4000円。当院に来院するセカンドオピニオンは3万3000円。差額は、オンラインシステムへの費用です。診察前には、主治医に患者さんのカルテや紹介状をいただき、診察後は返礼状をお送りしています。受診する患者さんの主治医はてんかんの非専門医だと考えていましたが、実際には半数が専門医にかかっていました。患者さんと話をして、心理社会面でのケアの重要性をあらためて感じました。

 もともと私の外来では初診はお話を1時間しっかり聞くのが方針です。病状はもちろん患者さんがどんな人生を送りたいのか、といった点まで深く聞き、最善の治療を考えます。セカンドオピニオンを受けることで、安心して治療を続けてほしいと考えています。

 具体的な成果が見えてきたことで、東北大学病院全体で、遠隔診療の課題に取り組んでいこうという機運が高まっています。他の診療科でもオンラインによるセカンドオピニオンが始まり、遠隔診療ワーキンググループも立ち上がりました。

 わが国は、欧米や中国と比較しても遠隔診療について後れを取っているように思います。国内にはICTの技術があるのですから、それをどう生かすのかを考えるべきです。2018年、オンライン診療に関する診療ガイドラインが発表されましたが、まだまだ多くの規制があります。

 東北地方は地理的に見ても、西日本と比較すると医師確保には不利な点も少なくありません。加えて東日本大震災による被災地の支援、働き方改革の実現など多くの課題もあります。

 しかし、子育て中の女性医師が自宅で診察をしたり、医師の少ないへき地を遠隔で支援したりできればと思います。遠隔医療の実現は、東北だけでなく日本全体が抱えるさまざまな医療課題を解決する突破口になるのではないでしょうか。

東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野
仙台市青葉区星陵町1―1
☎022―717―7000(代表)
http://www.epilepsy.med.tohoku.ac.jp/

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