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進化続ける尿路結石治療発症前診断やVR活用も

進化続ける尿路結石治療発症前診断やVR活用も

名古屋市立大学大学院医学研究科
腎・泌尿器科学分野
安井 孝周 教授 (やすい・たかひろ)
1994年名古屋市立大学医学部卒業。
名城病院泌尿器科医長、海南病院泌尿器科部長などを経て、2015年から現職。

 患者数が増加傾向にあると言われる尿路結石。名古屋市立大学腎・泌尿器科学分野では、尿路結石のリスクを評価する新たな診断マーカーの発見や、砕石手術の術前シミュレーションにおけるVR(仮想現実)の活用など、意欲的な挑戦を続けている。安井孝周教授は「近年、尿路結石の治療は劇的に変わりました」と話す。

―診断マーカーの研究について教えてください。

 尿路結石を発症しやすい人と、そうでない人。なりやすい時期や、なりにくい時期。発症する前にその人のリスクを評価できないだろうか。そう考えたことが研究の出発点です。

 当教室はこれまでに、尿路結石が自然に消失する現象を捉えることに成功。抗炎症性マクロファージ「M2」の貪食作用によるものであることを報告しました。マクロファージの働きが「尿路結石のできやすさ」に関与している可能性が分かったのです。

 M2マクロファージを活性化させるサイトカインにはインターロイキン4(IL│4)やIL│10などがあります。尿中のたんぱく質を測定してみると、尿路結石の患者ではIL│4の数値が低いことが明らかとなりました。尿中のIL│4が尿路結石の新たな診断マーカーとなり得ること、そして「尿路結石ができやすい人はM2マクロファージの働きが弱い可能性がある」と考えられます。

 尿路結石は最初に発症してから5年以内に、約50%の方が再発すると言われています。一度発症した方を対象に、M2マクロファージによる診断マーカーでリスクを評価。食事や水分の摂取を指導し、再発の予防に生かすこともできるでしょう。例えば健康診断などで導入されることが考えられます。

 予防のためのアプローチとしては、細胞を分解する機能である「オートファジー(自食作用)」と結石の形成の関係にも注目しています。障害を受けた細胞の自食作用がうまく働かないことが、結石ができやすくなる一因になると考えられます。

 オートファジーを亢進する物質を応用することで「尿路結石ができにくい体質」に改善することも可能になるかもしれません。

―尿路結石の治療の現状はいかがでしょうか。

VR技術を活用して立体画像を作成。
術前シミュレーションに役立てている

 以前なら結石のサイズが大きいため開腹したり、複数回治療したりしなければならなかったケースでも、腎盂尿管鏡を用いて低侵襲での治療に対応できるようになりました。また、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)によって1回で治療が完遂できるか、内視鏡治療が適切なのか、見極められるようになってきています。

 結石の位置はどこか、血管がどのように通っているのか。治療の低侵襲化が進んでいるとはいえ、腎臓を傷つけないために、しっかりと術前の準備を整えておく必要があります。

 そこで、私たちが導入したのがVRです。CTで撮影したデータを使って立体画像を作成。血管や腎臓の様子といった情報を、立体的に把握することが可能です。

―さらなる治療法の開発に向けて、異分野や他の機関との連携も進んでいます。

 結石の解析における新たなアプローチを探ろうと考え、工学部の隕石の研究に取り組んでいる先生方に協力していただいています。

 隕石の解析に用いられている手法が結石にも応用できる可能性があり、将来的に薬剤や予防法の開発に役立てられることを期待しています。

 尿路結石は肥満症やメタボリックシンドロームと深く関わっていることから、医学部内では内科との連携も進めています。また、ゲノム遺伝子の解析によって発症のメカニズムや結石患者のなりやすさを明らかにしようと、東京大学クリニカルシークエンス分野と共同研究に取り組んできました。

 これらの多様な連携による研究を通して、さまざまなことが分かってきました。この成果を臨床や治療法の開発などに生かしていきたいですね。

名古屋市立大学大学院 医学研究科 腎・泌尿器科学分野
名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
☎052─851─5511(代表)
https://ncu-uro.jp/

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