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連携ネットで患者情報共有 地域の医療を守り続ける

連携ネットで患者情報共有 地域の医療を守り続ける


院長(かじわら・しんすけ)

1976年徳島大学医学部卒業。
愛媛大学医学部附属病院、町立津島病院(現:宇和島市立津島病院)、
市立宇和島病院副院長兼診療部長などを経て、2010年から現職。

 1910年に開設された市立宇和島病院が110年の節目を迎える。地域に信頼される病院を目指し、患者情報を共有する「」を導入するなど、健全な経営のもと常に挑戦を続けている。就任から10年を迎える梶原伸介院長に、これまでの歩みと取り組みについて聞いた。

─10年間を振り返って。

 私は就任時、この病院を「地域で生き残ることができる急性期病院にすること」、「高度医療を院内できっちり完結させること」の2点を目標に掲げました。現時点でそれは達成できており、今後10年間もおそらく継続していけるでしょう。 

 現在、救急応需率は97%以上、病床稼働率は約92%になります。「断らない病院であること」を目指し、職員全員が高い意識を持って頑張ってきてくれたことで、地域から信頼される病院に成長できたのではないかと思います。

 この病院は、愛媛県の中心地である松山市から約100キロとかなり離れているため、「自分たちの地域のことは、自分たちがやらなければいけない」という意識が、医師や看護師のみならず、職員全員に強くあります。

 ただし、地域の人口が減少しており、求められる病院のあり方にも、今後は変化が起こってくるかもしれません。

―患者の情報をかかりつけ医が閲覧できる「きさいやネット」とは。

 患者さんの同意を得て、かかりつけの先生から、当病院のサーバーに直接アクセスして患者さんの診療・治療の記録(電子カルテ)を閲覧できる「きさいやネット」を2015年に導入しました。参加施設は現在88施設、これまでに閲覧同意書を得た方は約1万3000人にも上ります。

 医師の記録、検査結果、レントゲンやCTの画像なども見ることができ、利用料は無料です。地域の先生から大変喜ばれています。

 導入時の費用の半分は自主財源、残り半分は補助金でカバーしました。2020年度にシステム更新がありますが、費用は自己負担を目指しています。

 費用がかかることよりも、導入によって外来診療の負担が減ることのメリットが大きかったと感じています。地域における当病院の立ち位置も明らかにできました。

―健全な経営を続けられている要因は。

 私が就任する以前から病院の経営状態が良好だった上に、2009年に病院が改築されてから、さらに良くなった印象があります。ただ、これまでは順調でしたが、今後は人口が減って、次第に厳しくなっていくのではないかと予想しています。経費削減については、入札は当然ですし、医薬品についても契約先と細かく交渉を重ねています。通常の業務においても、電気を小まめに消すといった小さなことから一つずつ努力しています。「継続は力なり」。積み重ねが大切です。

 一方で、医療機器の維持・更新費として年間5億円を目途とし、10年先まで計画的な更新を予定しています。必要な投資はしていかなければ、医療の質の維持ができません。

 今後の課題は、人材の確保と育成です。現在でも若手の医師獲得のために、愛媛大学の医学生などを対象に、毎年見学ツアーを実施しています。

 事務スタッフは市職員なので異動があり、専門家としての育成が難しい面があります。反対に、病院独自で採用する職員は行政に関する知識が不足しています。医療事務のエキスパートでありながら市政にも精通した職員を育成する仕組みを考えたいと思っています。

 設立110年。どのような状況でも診療を続けてきた実績が、信頼につながっていると感じます。断らない、患者さんをすべて受け入れることにこだわってこなかったら、今の状況はなかったと思います。

市立宇和島病院
愛媛県宇和島市御殿町1―1
☎0895―25―1111(代表)
https://www.uwajima-mh.jp/

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