九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

透析療法に至らない未来を描いて

透析療法に至らない未来を描いて

独立行政法人 地域医療機能推進機構 熊本総合病院 實吉 拓 腎センター部長(みよし・たく)
1993年熊本大学医学部卒業、1999年同大学院医学研究科卒業(医学博士)。
熊本大学医学部附属病院腎臓内科などを経て、2016年から現職。

 熊本総合病院の腎センターでは、腎臓内科医が主体となって透析療法を行っている。實吉拓センター部長に、腎センターでの取り組みや腎臓関連疾患の現状について話を聞いた。

―腎センターの特徴は。

 当センターには、腎臓内科医が4人所属。八代市だけでなく芦北、水俣、人吉・球磨地区からの患者さんも多く、透析医療を必要とする患者さんを数多く診療しています。シャントの造設や経皮的血管形成術(PTA)も腎臓内科医が担当しています。

 透析室のベッド数は45床。多くの医療機関で行っている週に3回の通院を要する「血液透析」のほか、残腎臓機能を長く保たせながら自宅で実施できる「腹膜透析」が可能です。

 長期的な闘病が必要となる透析療法は、患者さんが自身のライフスタイルに合わせて治療を選択することが大切です。当センターでは本格的な腎代替療法(腎移植・透析)に入る前に、「透析療法選択外来」を受診していただきます。ここでは、看護師が患者さんに対して、血液透析、腹膜透析、腎移植などについてメリットやデメリットを説明。患者さん一人ひとりに、ライフスタイルまで考慮した上で治療法を選択してもらいます。

 同じフロアに診察室や透析室があり、CKDの外来診療から透析治療まで、共通のスタッフで連携して患者さんをサポートできるのも、われわれの強みと言えるでしょう。

 日本透析医学会の発表では、透析患者の総数は33万人を超えています。CKDは「国民病」とも言われている病気の一つです。

 当センターでは年80~90人ほどの患者さんに新規の透析導入を行います。CKDの主因は、生活習慣病。中でも糖尿病が大きな問題であり、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症は、進行すると治療が難しくなります。早期に発見し、治療を進めなければ腎機能が低下してしまう疾患にもかかわらず、患者さん自身には違和感や痛みがありません。症状がないため罹患(りかん)に気づきにくい病気なのです。

 すでに発症して病気が進行した患者さんの治療だけではなく、特定健診の受診率向上などによってCKDの早期発見を増やすこと、市民の方々にCKDや生活習慣病についての啓発活動を行いCKDの発症自体を抑制していくことが、透析患者さんを減らすために非常に重要だと考えています。これには行政と医療側が協力して対応していくことが必要だと感じています。

―今後どのような医療を展開したいとお考えですか。

 慢性腎臓病は、いまだ特効薬のない疾患です。透析患者さんには、できるだけ体に優しい安定した透析を提供していきたい。そんな思いもあって、血液透析療法に間欠的濾過透析(iHDF)のできる機器を新たに約20台導入しました。これによって、透析中の血圧低下や体のつり防止が期待できます。

 透析が必要なすべての患者さんを当院で診ることは不可能です。熊本県八代市内にある七つの透析クリニックやその他の地域のクリニックとも病診連携を強めながら、地域医療に携わっていきます。

 発症や進展を抑制するためには患者さん自身に生活習慣を整え、腎臓を守っていただかなければなりません。日ごろから生活習慣を見つめ直す時間をとってもらうため、月に1回のペースで医師やメディカルスタッフによる腎疾患のセミナーと料理教室を同時に開催し、啓発を進めています。

 新たな治療薬はなかなか出てきませんが、腎臓の分野でも再生療法についての研究が進んでいます。再生臓器を移植する―。そんな未来も、見えつつあります。しかし、一番の理想は、患者さんが透析療法に至らず、健やかに過ごせること。早期発見で病気の発症や進展を予防していきたいと思っています。

地域医療機能推進機構 熊本総合病院
熊本県八代市通町10―10
☎0965―32―7111(代表)
https://kumamoto.jcho.go.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる