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軸は「多様性と調和」 新しい時代の医療をつくっていきたい

軸は「多様性と調和」 新しい時代の医療をつくっていきたい

徳島大学病院 香美 祥二病院長(かがみ・しょうじ)
1980年徳島大学医学部卒業。
新潟大学医学部腎臓研究施設(現:腎研究センター基礎部門)、米ユタ大学留学、
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発生発達医学講座小児医学分野
(現:医歯薬学研究部小児科学)教授などを経て、2019年から現職。

 小児科医としてさまざまな疾患の子どもたちと向き合ってきた。その経験を土台に、病院づくりのテーマとして定めたのは「多様性と調和」。4月、病院長に就任した香美祥二氏の「原点」を聞いた。

この子を救いたい 自分に何ができる?

 漠然と内科系の診療科をイメージしていた。臨床実習で各科を回り、小児科が自分に合うと感じた。

 「子どもの回復力というのはすごい、と驚かされたのです。文字通り100%元気になって、笑顔でバイバイと手を振って帰っていく。その子どもたちが将来の日本を支えていく。小児科の医師が足りていないという状況も聞きまして、なおさら、やりがいも大きいだろうと思いました」

 日本の乳幼児の死亡率は世界的にも低い。ただ高度な医療レベルを維持し続けるために必要な小児科医の数は、決して充足しているとは言えない。増加傾向にあると言われる医療的ケア児に対する体制も課題だ。

 「助けられる命は増えたが、つらい現実がある」。この子を苦しみから救いたい。何か方法はないかー。その思いが小児科医としてのモチベーションだと香美祥二病院長は言う。

 腎炎などで一定数の子どもが命を落とすのを見てきた。病態解明の研究に打ち込み、血圧や臓器の形成などを担う「腎臓レニン・アンジオテンシン系(RAS)」の重要性を明らかにした。

 RASは小児の腎臓病の発症などに関わる。香美病院長の研究成果は治療薬の開発を加速させ、慢性腎臓病の進行を大幅に遅らせることができるようになった。「研究を通じた問題提起」は、今も香美病院長が重視していることの一つだ。

多様な個性によって美しいハーモニーを

 トップに就いても大切にしていることは同じ。「多様性と調和」だ。

 「障害や病気があっても活躍できる場所があるはずです。多様な個性の子どもたちを、どう社会と調和させるか。その子が持っている力を、どうやって最大限に引き出すか。ずっと考え続けてきました」

 それは病院の組織づくりにおいても当てはまるはずだと香美病院長は言う。個性が集まって医療は成り立つ。チームが美しいハーモニーを奏でるために必要なことは、小児科医として実践し、学んできたことの中に答えがあると信じている。

患者さんと今日はどんなことを話した?

 徳島大学病院は変化のさなかにある。2月、徳島大学病院と、隣接する徳島県立中央病院の間にあった塀が取り払われ、「メディカルストリート」と名付けられた道で結ばれた。県による「総合メディカルゾーン構想」の一環だ。駐車場の共同利用が始まり、バス停も新設。2病院の機能分化や連携が推進されている。

 「これも調和の一つのかたちですね。例えば両院の小児科には従来から頻繁な行き来があり、関係性も十分。各診療科間の連携もどんどん広げていきます。日本は新しい時代に入った。だから新しい医療をつくっていこう。職員にはそう呼びかけています」

 県のアレルギー疾患医療拠点病院に指定されたことで、小児から成人まで、総合的に対応できるアレルギーセンターの設置準備も進めている。今後は順次、時代のニーズに応じた診療機能のセンター化に取り組んでいくという。

 また、臨床研究の強化などを目指した福利厚生棟の建設(2020年に竣工予定)が控え、ゲノム医療もより積極的なアプローチを展開していくつもりだ。

 実習中の学生たちには「今日は患者さんとどんなことを話した?」と尋ねる。「患者さんの声に耳を傾け、望んでいることを共有する。医療がどんなに高度化しても、すべては、そこから始まるのだと思います」

徳島大学病院
徳島市蔵本町2-50-1 ☎088-631-3111(代表) https://www.tokushima-hosp.jp/

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