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身近で安心できる「市民病院」であり続けたい

身近で安心できる「市民病院」であり続けたい

地方独立行政法人 市立大津市民病院 若林 直樹 院長(わかばやし・なおき)
1987年京都府立医科大学医学部卒業。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、
京都府立与謝の海病院(現:京都府立医科大学附属北部医療センター)、
京都府立医科大学消化器内科講師などを経て、2019年から現職。

 今年で創立120年を迎える市立大津市民病院。地方独立行政法人としてスタートして3年目。4月に新しく就任した若林直樹院長は、「今後も市民のための健康医療拠点であり続けるため、安心できる医療を提供する」と決意を述べる。

ボート部で鍛えられる

 1960年、高度経済成長の真っただ中、広島県で生を受けた若林直樹院長。生まれた小さな山間部の町には、診療所が一つだけ。クリスチャンの女性医師が、校医やかかりつけ医として、地域医療を一手に引き受けていたという。

 颯爽と往診して回る姿に、憧れた。「風邪を引いて診療所に行くと、独特の匂いがするんです。それが強烈に印象に残っていて」。中学、高校と成長するうち、いつしか医者になりたいという思いが強まった。

 進学したのは京都府立医科大学。学生でないとできないスポーツをやろうと決めていた。選んだのはボート部。「見るよりずっと苦しい競技。朝5時に起きて練習してから大学へ行く。体力的に大変でしたが、文武両道でやり通すんだという意地もあった」と回想する。

 一糸乱れぬ連携プレーで身に付けたのは、〝息を合わせる〟こと。「スタンドプレーをしない、組織内で自分の力を生かす。考え方のベースができたと思います」

 それを再確認したのは、卒業10年目で留学した、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでのこと。「世界から患者さんが来て、さまざまな治療を受ける。その中で感じたのは、個々の能力は突出していなくとも、システムさえしっかりしていれば組織は動くということ」

 日本人は能力が高いがアウトカムはどうか、自由な発想を生かすとはどういうことか―などの方法論について考えるきっかけにもなったと話す。

患者になって分かったこと

 自身が率いる消化器内科のモットーとして「Patient-oriented 患者にやさしいチーム医療」を掲げる。「『オリエンテッド』はいい言葉やなあと。治療は患者さんに前向きさをもたらすものでないと。そこはぶれないようにと思っています」

 目の前の患者に寄り添うことの大切さ。それを体感したのは5年ほど前。急病でここのICUに担ぎ込まれ、そのまま入院生活となった。「せん妄状態になる理由がよく分かった。いつもと違う環境で体調は最悪。すごく不安なんだと、身に染みて感じました」

 医療従事者は、研修時に患者体験をしてみるのも一手、と語る。「外来ではこれだけ待たされる。医師の言葉や看護師の態度一つひとつが気にかかる―など、気付くことは多いのでは」

「市民病院」だからこそ

 6月、救急体制の存続に関わる報道がなされ、憶測が広がった。「人員確保のめどはついた。しっかりと変わりなくやっていく」。急性期病院として、窓口である救急は絶対的な柱。市民病院の役割は、今後も果たしていく覚悟だ。

 もう一つの柱はがん診療。より強化しているのが、がん検診だ。大腸CT検査は、滋賀県で最も多く実施。県内初となる膵がん検診も一昨年スタートした。「20年の実績がある緩和ケアにも継続して力を入れていく。がんの早期予防から緩和まで、安心して任せてもらえる体制を維持します」

 若い世代に病院を身近に感じてもらおうと、広報活動の輪も広げている。ホームページは昨年リニューアル。人間ドックもネットで予約可能となった。昨年からは広報誌の院外配布や親子対象の病院体験イベントも始めた。「やっぱり市民病院があって安心、とずっと思ってもらいたい。これからが正念場です」

地方独立行政法人 市立大津市民病院
滋賀県大津市本宮2―9―9 ☎077-522-4607(代表)
https://och.or.jp/

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