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身体抑制廃止の機運を医療の場にも広げたい

身体抑制廃止の機運を医療の場にも広げたい


理事長(はしもと・やすこ)

1981年名古屋保健衛生大学(現:藤田医科大学)卒業。
香川医科大学、米インディアナ大学腫瘍学研究所、医療法人社団和風会橋本病院などを経て、
2000年から現職。

 「第21回全国抑制廃止研究会 大阪大会」(12月21・22日:大阪国際会議場)の大会長を務め、橋本病院ならびに千里リハビリテーション病院を運営する医療法人社団和風会の理事長でもある橋本康子氏。抑制廃止に対する医療従事者の考えやこれまでの歩み、そして病院での取り組みについて話を聞いた。

―「抑制廃止研究会」発足の経緯は。

 東京の上川病院(現:多摩平の森の病院)の精神科の吉岡充先生が、「縛らない看護」を提唱されたのが始まりです。吉岡先生は、どのような患者さんであっても、医療人が患者を縛る行為をすること自体が間違っているのではないかと問題提起されました。厚生労働省が、2001年に「身体拘束ゼロへの手引き」を出しています。その原点となったのが吉岡先生の活動です。

 身体拘束ゼロの考え方は、福岡県の有吉病院をはじめ10カ所の病院の先生方の賛同を得て、「私たちの病院は患者さんを縛る看護はしません」と新聞一面に発表した「抑制廃止福岡宣言」に結びつきました。その後、北海道などの各地で同様の宣言が行われ、抑制廃止が全国に広がった経緯があります。

―抑制廃止に対する思いは。

 身体抑制は、人権問題であるだけでなく、体に負担をかける行為です。床ずれができ、心肺機能も落ちる。肺炎にもなり、排尿の管をずっと入れていれば尿路感染症にもなりやすく、筋肉も骨もあっという間に弱くなります。病院が廃用症候群をつくってしまいかねないことを意識する必要があると思います。

 抑制といっても、ベッドや車いすに体を縛ることだけが抑制ではありません。手を使わせないミトン抑制、部屋への閉じ込めや、強い言葉で行動を封じる〝スピーチロック〟なども身体抑制といわれています。介護保険制度の改正後、特別養護老人ホームやグループホームなど、介護分野では抑制廃止の考え方が浸透しています。しかし医療の場は、むしろ必要という意見も多いようです。

 身体抑制については、「夜勤で看護師が2人しかいないのに抑制廃止などできない」「現場を知らない、甘い、きれいごとだ」などの厳しい意見も寄せられています。確かに術後に患者さんの安全確保のために身体抑制が必要な時期はありますが、抑制はその一定期間だけに限定する、ご家族が来ている時やケアに入っている時間は抑制を解くなど、段階的に抑制を減らす方法はあります。

 今大会では、「高度急性期病院での抑制しない看護へのチャレンジ」というテーマで、元金沢大学附属病院看護部長で現在石川県看護協会会長の小藤幹恵氏に基調講演をお願いしました。

 身体抑制はしたくない、医療事故を防ぐために仕方なくやっている医療職がほとんどです。それならば、医療事故を防ぐ手だてとして身体拘束以外の方法はとれないでしょうか。人手の問題もありますが、効率の良さやルーティンワークをこなすことだけにとらわれず考えていくべきだと思います。

―和風会の今後について。

 和風会の病院では、一日中見守る必要がある患者さんが来院された場合、マンツーマンで看護師が担当し、その方の行動の理由を探り、対処していくようにしています。

 また、抑制すると体や心にどんな影響が出るのか、実際に職員に抑制体験をしてもらっています。加えて、プライバシーに配慮しながら必要な場合は赤外線センサーや顔認証システムなども利用し、患者さんの立ち上がりや外出時に気付ける工夫もしています。

 抑制廃止の考え方は、医療の世界ではまだメジャーとはいえません。今後は内科、整形外科、認知症など、研究会以外の各学会で抑制廃止を演題の一つとして取り上げていただけるよう、活動を広げたいと思います。

医療法人社団和風会
香川県三豊市山本町財田西902―1
☎0875―63―3311(代表)
http://www.wafukai-hashimoto.jp/

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