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「脳卒中・心臓病」の社会的損失を減らす! 診療情報の収集・活用へ

「脳卒中・心臓病」の社会的損失を減らす! 診療情報の収集・活用へ

 2018年12月、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下、)が成立した。大規模なデータベース構築を目指す動きもあるなど、循環器病を取りまく状況に変化が訪れている。

循環器病のインパクトは

 循環器病対策基本法の成立を受けて、国は「循環器病対策推進基本計画」を策定し、少なくとも6年ごとに内容を見直すことが義務付けられる。また、都道府県は「」の策定に努め、6年ごとの変更を目指す。さまざまな施策を通じて循環器系の疾患の継続的な啓発や、迅速な搬送と受け入れ体制の整備、研究の促進など、総合的な循環器病対策を推進。国民の健康寿命の延伸、医療・介護費の軽減につなげる。

 6月に公表された「2018年人口動態統計」によると、昨年の死因の1位は「悪性新生物(腫瘍)」。37万3547人で全死亡者の27・4%を占める。2位が「心疾患(高血圧性を除く)」で15・3%(20万8210人)。1985年にそれまで2位だった脳血管疾患を抜くと、以降は死亡数・死亡率ともに増加傾向にある。「脳血管疾患」は7・9%(10万8165人)で4位だった。1970年をピークに、死亡数・死亡率ともに増減を繰り返しつつ減少に向かっている。

 心疾患、脳神経疾患は要支援・要介護者となる主な原因でもある。2016年「国民生活基礎調査」の結果では2位の「脳血管疾患(脳卒中)」と6位の「心疾患(心臓病)」を合計すると、21・2%でトップとなる(脳血管疾患16・6%、心疾患4・6%)。

 男女別に要因を見ていくと、男性は実におよそ4人に1人(25・7%)が脳卒中によって要支援・要介護者となっている現状がある。女性(11・8%)と比較して大きな開きがあり、心臓病の割合についても男性が上回っている(男性:5・2%、女性:4・3%)。なお、男女別、総数ともに要介護、要支援となった原因の1位は「認知症」。


 傷病別の医療費に占める割合も最多だ。2016年度の「」は30兆1853億円。循環器系の疾患は、2割近くの5兆9333億円(19・7%)にも達する。「心疾患(高血圧性のものを除く)」1兆9378億円、「高血圧性疾患」1兆7981億、「脳血管疾患」1兆7739億円など(2016年度「国民医療費の概況」)、社会に与える影響、医療費の負担が大きいことが分かる。

「診療の実態」把握現場や社会に生かす

 国は今年1月、1回目の「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」を開催。6月までに計4回の議論を重ね、とりまとめ案が公表された。循環器病は発症後、早急に適切な治療を開始する必要があり、回復期や維持期にも再発、増悪をきたしやすい。こうした特性から患者は発症するたびに異なる医療機関を受診する可能性があり、既往歴を共通の基準で統一的に管理するのが難しかった。

 そこで、医療機関から診療情報を収集し、集約・管理・提供する機能を担う「循環器病情報センター(仮称)」の設置が計画されている(国立循環器病研究センターを予定)。「診療の実態」を把握し、個々の患者に適した医療の提供、患者数やり患率などを踏まえた効率的な体制の構築、診療情報の利活用を図る。

 登録診療情報の収集の対象となるのは、まずは循環器病の関連学会が認定する医療施設や救命救急センターなどが主だと考えられる。


 各医療機関は、センターに収集されることに同意した患者の診療情報を「顕名情報」として登録。疾患は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離、急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)の6項目。
 再発、増悪した患者の搬送先の医療機関がデータベースにアクセスすれば過去の診療情報の活用が可能になる。将来的には急性期だけでなく、回復期、維持期の診療情報の収集、活用も見据える。
 また、蓄積した情報を地方自治体の診療や救急体制の構築、評価などにも用いることで、地域の公衆衛生の向上、地域間の医療の平準化などにも役立てる。
 循環器病に関する公的な情報収集の仕組みは初めての試みだ。 モデル事業で診療情報の収集事業を開始し、全国規模での運用を目指すことになる。どのような成果が得られるのか、動向が注目される。

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