九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

見え始めた回復のきざし まずは役割を果たしていく

見え始めた回復のきざし まずは役割を果たしていく

日本赤十字社 福島赤十字病院 
渡部 洋一 院長(わたなべ・よういち)
1983年富山医科薬科大学医学部(現:富山大学医学部)卒業。
福島県立医科大学脳神経外科学教室入局。
国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)、
福島県立医科大学附属病院救急科副部長、
福島赤十字病院脳神経外科部長などを経て、2015年から現職。


 2019年1月に新病院での診療がスタート。福島赤十字病院が強みとする救急医療、地域医療の強化を図り、免震構造の採用や屋上ヘリポートの設置で災害への対応力も高まった。地域の医療資源は少しずつ回復のきざしを見せつつある。渡部洋一院長は言う。「10年後、状況は大きく変わっているはず」

—新しい環境が整って以降の変化や手応えは。

 旧病院との大きな違いの一つは、救急患者用の病床を12床設置したことです。救急搬送患者はもとよりクリニックの先生方や他の病院から紹介された緊急性の高い患者さんを、ここでいったん受け入れて治療します。

 各診療科のベッドに空きがなく、患者さんの受け入れをお断りせざるを得ない。そんなケースがほぼなくなって、円滑な地域連携につながっていると感じています。2019年に入って紹介率、逆紹介率ともに90%超です。

 救急車の受け入れは年間およそ3500台。2007年から2018年までの12年間、ここ県北医療圏で最多です。ERの前には最大で3台の救急車が並んで停車できるスペースを確保しました。

 ERに近接して検査部門を配置するなど動線を熟慮したことも特徴です。CT検査、MRI、エックス線撮影、内視鏡検査や生理検査を円滑に実施することができます。

 福島市に隣接し、同じ県北医療圏に含まれる伊達市には、急性脳梗塞に対する機械的血栓回収療法を行える医師がいません。また急性心筋梗塞に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)が可能な施設がないのです。

 そこでこの6月、福島市と伊達市の輪番制に参加する医療機関の協議で「伊達市で発生した急性脳梗塞と急性心筋梗塞は福島市の輪番病院で受け入れる」ことを決定しました。

 当院の救急患者さんで最も多いのが脳卒中の患者さんです。これからより広域の患者さんを受け入れていくことになると思いますし、2019年度に始まった制度「1次脳卒中センター」の施設認定も見据えています。

—災害対策についてはいかがでしょうか。

 災害拠点病院として免震構造を採用したほか、屋上に7㌧までのヘリの離発着が可能なヘリポートを設置しました。

 また、2台の非常用発電機を屋上に置きました。災害で電力の供給がストップしてしまった際にも、病院の機能を3日間、フルの状態で維持することが可能です。水については井水と水道水を半々の割合で使用。空調は毎月の使用量を考慮しながら、ガスと電気を使い分けてランニングコストの低減を図っています。

 多数の傷病者が発生した場合には、1階部分の横95㍍、奥行き8㍍のピロティ空間をトリアージスペースとして活用します。同じく1階の多目的ホールや検査室前にも医療ガスの配管がありますので、パブリックスペースを使って状態を安定させるための治療を行うこともできます。

—今後の役割をどのように考えていますか。

 震災と福島第一原発の事故の影響を受け、福島県の全域で初期研修医の数が激減。当院も震災翌年はマッチングがゼロとなりました。

 その状況も、年々回復に向かっているところです。現在、当院の初期研修医は15人。そのまま後期研修で福島県内に残ってくれる医師たちも増加傾向にあります。10年ほど先には医療環境も良い方向へ変わっているのではないかと期待しています。

 高齢の患者さんの増加によって疾病構造が変化し、地域医療構想の整備が進む中で、医療機関の役割分担はさらに明確なものになっていくでしょう。

 当院は急性期医療を軸足に救急医療、地域医療、災害医療、そして医療者の育成。これらの強みを伸ばし続けていきます。

日本赤十字社 福島赤十字病院
福島市八島町7─7
☎024─534─6101(代表)
http://www.fukushima-med-jrc.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる