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行動療法を取り入れたADHDの治療を実践

行動療法を取り入れたADHDの治療を実践


主任教授 (やました・ゆうしろう)
1983年久留米大学医学部卒業。
米ベイラー医科大学小児科(小児神経部門)リサーチフェロー、
久留米大学医学部小児科学講座准教授、同発達障害担当教授などを経て、
2015年から現職。

 160人もの医局員数を誇る久留米大学医学部小児科。開業医であった祖父、久留米大学名誉教授である父親と三代にわたって小児医療に取り組んできた主任教授の山下裕史朗氏は、発達障害医療の第一人者として地域の子どもたちと向き合い、治療にあたっている。

―発達障害とADHDについて教えてください。

 久留米大学小児科は、医局員数160人と規模の大きい診療科です。医局内には13の専門グループがあり、小児科領域をすべてカバーする総合診療科といえます。

 その中で私は、小児の発達障害を専門に、研究と診断・治療を行ってきました。発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)、限局性学習症(SLD)、発達性協調運動症(DCD)などがありますが、比較的患者数が多いのが「ADHD」と呼ばれる「注意欠如多動症」です。

 ADHDの症状としては大きく不注意、多動性、衝動性の三つがあり、一般的な発症率は12歳までに3〜5%と言われ、ASD、SLD、DCDなどの症状と重なっていることも少なくありません。当医局の神経科を受診するお子さんは年間に約300人、その約半数の150人が発達障害と診断され、50〜60人がADHDです。

 発症の要因としては生まれながらの遺伝的な要素と、もう一つ環境要因があります。障害があることが理解されずに不適切な対応、あるいは虐待的な対応があるとさらに症状が目立ってきます。

 症状が軽度であれば、日常生活に困っていないと診断されない場合もあります。しかし、学習面の遅れや、周りの友人、教師とのトラブルなど人間関係で支障があるようであれば治療が必要になります。

―治療法は。

 ADHDの治療には非薬物治療と薬物治療があります。最初に検討するのは薬を使わない心理社会的な治療法で、環境調整として子どもが集中しやすい環境をつくっています。例えば、大人数よりも少人数で学習する、なるべく時間を短く区切って10分ごとに休憩を入れるなどです。

 「ソーシャルスキルトレーニング」では、あいさつをする、謝るなど、基本的な社会のマナーやルールを身に付け、対人関係を良好に保つことを学びます。周りの保護者や教師が、問題のある行動にどう対応するかを学ぶ「ペアレントトレーニング」や「ティーチャートレーニング」も普及してきています。

 久留米大学小児科独自の取り組みとしては、2005年から夏休みを利用した「くるめサマー・トリートメント・プログラム〜くるめSTP」を毎年開催しています。これは、アメリカで行われている行動療法を取り入れたもので、これまでに高い治療効果が確認されています。

 薬物療法については現在、メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンの三つの治療薬が認可されています。また、新たに承認された新薬のリスデキサンフェタミンメシルも登場しています。小児期のADHDはなかなか完治するものではありませんので、継続的な薬物治療を行うことで寛解率が高まることもあります。

―発達障害が疑われる場合の対応は。

 発達障害には、このテストを行えば陽性と判断できるようなバイオマーカーはありません。総合的な所見から診断は慎重に行わなければならず、初診は1〜2時間かけています。例えば友だちとけんかが絶えないとか、普段から極端に落ち着きがないなどの行動がある場合に、保護者や教師が気付き、早めに対処することが大切です。

 専門の医療機関の受診だけでなく、学校の特別支援教育コーディネーターや保健所などにも窓口があるので、それらと連携して取り組んでいきたいと思います。

久留米大学医学部 小児科学講座
福岡県久留米市旭町67
☎0942―35―3311(代表)
http://www.ped-kurume.com/




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