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良き教育者であるために

良き教育者であるために

京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科
教授(たかはし・けんじ)

1990年京都府立医科大学医学部卒業。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校、日本医科大学整形外科・リウマチ外科臨床准教授、
国際医療福祉大学医学部整形外科教授などを経て、2020年から現職。

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月に教授就任。診療や手術が思うようにならない中で、臨床に優れた医師を育てることを信念に取り組む。10年ぶりに戻ってきた母校で今後、実現したいこととは。

「白夜」に導かれ整形外科の道へ

 工学部を目指し高校生活を送っていたある日、偶然手にしたのは、渡辺淳一の自伝的小説「白夜」だった。研修医がへき地で苦労しながら一人前に育つ姿に感銘を受けた。「そのとき、整形外科医になろうと決めました」と振り返る。

 数年後、若狭湾沿いにあるへき地の病院に赴任する機会に巡り合った。雪深い道での交通事故や林業事故、スキーや海水浴でのアクシデント…。まだ若く、自信はない。しかし、目の前の患者を救うのは自分しかいない状況が続く。必死に手を動かし、勉強し、技術を磨いた。「とにかく真摯(しんし)に向き合うしか、方法がなかった。おかげで、臨床の自信がつきました」と懐かしむ。

 大学に戻ってからは股関節外科を担い、2010年にはリウマチの最先端を学ぼうと日本医科大学へ。次に教授として赴任した国際医療福祉大学では、人工関節を探求。そして2020年、再び母校へ戻った。

広い守備範囲で高みを

 1949年設立の歴史ある教室。関連病院は50以上、医局員は200人超、同門会も600人を超える大所帯を束ねる。「11の専門グループがあり、幅広い臨床に対応できることが特長です。さらに全国でアイデンティティーを示せるよう、一つひとつのレベルを上げていくのが私の役目です」

 その先鋒(せんぽう)にしたいのが、自らの専門である関節外科。「中でも罹患(りかん)人口2000万人以上とされる変形性膝関節症ですね。手術だけでなく薬物療法、リハビリ、人工関節や骨切り術など最適な方法で対処します」

 研究は、変形性膝関節症のMRI解析。レントゲンでは把握しきれない症状や、その後の経過を知り得る検査方法の開発に挑んでいる。成果の一つとして、半月板が内側にずれている患者は、軟骨が傷みやすくなることを突き止めた。

 ずれた半月板を元に戻す縫合術はリスクもある。注目しているのはリハビリテーションだ。「有効なリハビリを開発した結果、症状も、関節軟骨が傷むのも抑えられることが分かりました。関節内注射、再生医療などと組み合わせる研究も計画中です」

 実は、自身がこの変形性膝関節症を患う。5年ほど前、自転車レースのためのトレーニング中に発症。使い過ぎによるものだという。半月板が痛み、歩くのもおっくうになった。共同開発した温熱療法なども活用しながら治療中だという。

 「まさか自分が開発した機器を、自分で使うとは思いもしませんでした。膝グループの先生からは手術した方がいいと勧められていますが(笑)。患者さんの気持ちは痛いほどよく分かります」

良き教育者になる

 2月の就任時から、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々。まず手術ができなくなり、医局員の半分が在宅勤務になった。院内感染が起きないよう最大限の取り組みを行いながらも、医師の育成については、しっかりとしたビジョンを示す。

 「大学の教授はスーパードクターでも、有能な研究者でなくてもいい。ただ、良い教育者であることです」と高橋教授。今回起用されたのも、その熱意ゆえと考えている。

 若手に伝えたいことは二つ。「まずは臨床の基本を身に付けること。患者さんの顔をしっかりと見て、触れて、診る。病棟を回って1日1回は必ず声を掛ける。電子カルテだと、患者さんの顔を見ないことも多い。患者さんの気持ちをすくい取らずして、相手の立場で考えることはできない」と話す。これは、患者だけにとどまらない。メディカルスタッフ、検査技師、理学療法士など、共に働くスタッフの気持ちも想像し、行動することを大切にしてほしいと、入局者に対してのあいさつで伝えたという。

 さらに、自分のキャリアにおいて、何が大切かを考えることも忘れてはならない。「他者に貢献すること、責任の中で成長することを人生の目的にしてほしい。切に願います」

 まずは良き医師として育てること。その中からスーパードクターと呼ばれるほど臨床で活躍する医師をはじめ、行政で活躍する、あるいは教育者として活躍するといった医師が出てくることが夢だと語る。

 そんな、将来活躍できる医師を育てたいとの思いで家族を残し、単身赴任した。子どもたちには常に自己研さんする背中を見せたいと語る。

 「息抜きは、家族との時間です。テレビ電話を前に一緒に食事したり、子どもの勉強を見たり。オンラインの恩恵を享受しています(笑)」


京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 ☎️075-251-5111(代表)
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/

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