九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

自由を重んじる文化が 研究の源にある

自由を重んじる文化が 研究の源にある

信州大学医学部泌尿器科学教室 石塚 修 教授 (いしづか・おさむ)
1984年信州大学医学部卒業。
佐久総合病院泌尿器科、市立甲府病院泌尿器科医長などを経て、2014年から現職。

 「自由」「手術」「神経泌尿器科学」を教室のモットーに掲げる信州大学医学部泌尿器科学教室。再生医療にも力を入れる。自らも新たな研究を模索し続ける石塚修教授の現在地は。

―多施設共同で再生医療を研究しています。

 尿道の括約筋の再生医療について臨床研究を進めています。正式な研究テーマは「男性腹圧性尿失禁に対する非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来再生(幹)細胞の傍尿道注入治療の有効性及び安全性を検討する多施設共同試験」。

 名古屋大学医学部附属病院を中心に、金沢大学附属病院、獨協医科大学病院と当教室の4施設が参加しています。

 腹圧性尿失禁は、尿道括約筋機能障害によるものでくしゃみやせきなどによって生じる腹圧で尿が漏れてしまうという疾患です。

 今回、対象となった患者さんたちは、前立腺肥大症や前立腺がんの手術後遺症などがその主な原因。前立腺肥大症や前立腺がんは高齢化によって増加していますので、悩んでいる患者さんも少なくありません。

 しかし、治療法の選択肢は少なく、特に前立腺がんなどの術後の腹圧性尿失禁に対しては、有効性の高いエビデンスのある治療法がないのが現状です。

 今回実施したのは、人の皮下脂肪の組織を使った再生医療です。まず、患者さんから皮下脂肪を取り、この組織から幹細胞を抽出。幹細胞を尿道括約筋に注入するというものです。

 再生医療の場合、1年後の経過を診る必要があるのですが、現在1年経過して得ることができたデータを解析する段階に入っています。

 すでに良い結果も出始めています。超高齢社会でQOLを維持する新たな治療法として、今後、期待されると思います。

―伝統的に再生医療に取り組んでいるのでしょうか。

 3代前の初代教授の時代から力を入れています。

 今はラットを使い、膀胱(ぼうこう)の再生医療研究に取り組んでいます。

 例えばがん患者さんの場合、膀胱がんや子宮頸がんなどで放射線治療を受けた際、照射によって膀胱が萎縮してしまうことがあります。萎縮膀胱によって頻尿や尿意の切迫感などの症状が起こり、QOLに支障を来すことがあります。

 そこで私たちは骨髄幹細胞を抽出して培養。増えた細胞を移植し膀胱の再生ができないかと考えました。

 しかも単に細胞を移植するだけでなく、細胞をシート状にしてこれを多層化。この多層化した構造体を、バイオ3Dプリンターを活用して立体的な構造体にし、それを移植することができないかと考えました。もともとの臓器の形に近いものをつくることで、効率良く再生につながると考えています。再生率についてはラットでは大変良い結果も出ました。

 2017年に論文にし、アメリカ泌尿器科学会ではベストポスター賞を受賞することができました。臨床での実用化を目指して今後も研究を続けていきます。

―研究の原動力となるものは何でしょう。

 毎年発行している教室の業績録の表紙にはその年のテーマを私が決めて表記しています。「チャレンジ」「ニューウェーブ」「チェンジ・ザ・ワールド」など、毎回、挑戦する心を大切にした言葉にしています。

 今は東洋医学の「冷え」という概念を西洋医学のエビデンスを持って説明できないかといった研究にも取り組んでいます。夜間頻尿の解決につなげたいという思いから発想しました。周囲から見るととっぴな発想に思えることであっても、新しい研究を生み出す大きな力になることがある。自由で挑戦的な気持ちを忘れずにいたいと思っています。

信州大学医学部泌尿器科学教室
長野県松本市旭3―1―1
☎0263―35―4600(代表)
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/urology/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる