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臨床と研究の両面を突き詰め完成度を高めていきたい

臨床と研究の両面を突き詰め完成度を高めていきたい

高知大学医学部薬理学講座 齊藤 源顕 教授(さいとう・もとあき)
1991年鳥取大学医学部卒業。米エール大学医学部、
鳥取大学医学部附属病院泌尿器科講師、同医学部病態解析医学講座分子薬理学分野准教授などを経て、2013年から現職。

 排尿障害を専門とする薬理学講座教授であり、専門医として泌尿器科領域の「なぜ」を探し続ける。臨床と研究の高度な両立に力を注ぐ齊藤源顕教授が目指すものは。

―どのような研究を進めていますか。

 当教室では、現在「中枢機能から見た排尿機能」をテーマとした研究を進めています。

 例えば、テストや運動会といったイベントの前に「頻繁にトイレに行きたくなる」といった経験はありませんか。一時的な現象であれば「緊張しているから」と、精神的なものが理由だと想像できます。

 しかし、慢性的に起こる場合は、尿意に関わるメカニズムに何らかの障害が生じていることが考えられます。これまでは主に膀胱の機能に目が向けられていたのですが、排尿は実は中枢神経系がコントロールしていることが分かりました。

 こうした症状に悩む方にどのような薬を使ったら効果が期待できるのか。その薬が本当に有効であることをどう証明するかが、私たちの研究のポイントです。

 心掛けているのは「研究のための研究」になってしまわないように気をつけることです。

 ベースとなるのは、臨床の場で生じた疑問の解決方法を研究で解き明かし、そして臨床にフィードバックすること。臨床医の視点と研究者の視点をもち、それぞれを相互に結びつけながら、どちらの質も高めていくことが理想です。

―大切にしていることを教えてください。

 臨床では、一人一人を丁寧に診療することを重要視しています。

 症例の中には、これまで常識とされてきた理論では説明できない病態があります。なぜそのような病態に至るのか? 頭の中に常に「Why」と思い患者と向き合わなければ、本質を見極めることができないと思います。

 膀胱に尿がたまっても排出できなくなる「尿閉」の原因は、膀胱が「張る」ことで平滑筋が伸び、傷ついてしまうことが原因だと考えられていました。しかし、研究を進めていく中で、平滑筋は簡単には傷つかないことが明らかとなりました。

 そこで、私は「尿閉が起こるメカニズムは他にあるのではないか」と考えたのです。原因が平滑筋ではないとすると、次に可能性として考えたのは微小血管です。そこに圧力が加わることが原因ではないかと推測し、検証を行いました。

 その結果、虚血再灌流障害が起こっていることを確認しました。従来、尿閉によって膀胱にたまった尿を排出させる方法は、カテーテルを緊急処置として挿入する方法が中心でした。虚血再灌流障害が原因であることが分かったことで、尿道カテーテルを留置して膀胱を休めるなど、治療の選択肢が広がりました。この研究に関する論文は「Journal of Urology」にも掲載されました。

―今後は。

 2013年に高知大学教授に就任して以降、国内外、学内外を合わせて、教室として36の賞を受賞することができました。もちろん、受賞することそのものが目的ではありません。でも、懸命に取り組んできた仕事が評価されるのは、やはりうれしいことです。教室員の各メンバーが「挑戦してみたい」と思っていること、その気持ちを大事にしながら、今後も世の中に評価され、貢献できる結果を残したいと思っています。

 多くの排尿障害は、直接、生命予後に関わるわけではありません。しかし、QOLを大きく左右するものです。

 尿漏れが気になって外出できない。積極的に行動できない。そうした悩みを少しでも緩和できたらと思っています。泌尿器科領域における排尿障害の薬物療法は、これからもっと重要な位置を占めることになるでしょう。その完成度を高めていくのが、私たちの永遠のテーマです。

高知大学医学部薬理学講座
高知県南国市岡豊町小蓮185─1
☎088─866─5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~ff_phrmc/

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