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臨床と研究の両面から 内科学全体の発展を願う

臨床と研究の両面から 内科学全体の発展を願う

奈良県立医科大学 循環器内科学教室 
斎藤 能彦 教授(さいとう・よしひこ)

1981年奈良県立医科大学卒業。浜松労災病院内科、
国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)研究所、
京都大学大学院医学研究科助教授などを経て、2002年から現職。

 2018年1月、奈良県立医科大学内科学第一講座が、循環器内科と腎臓内科に分離独立。「奈良医科大学の内科学発展のための通過点。これまで以上の成果を目指す」と循環器内科の斎藤能彦教授。その現状は。

―運営の方針や力を入れてきたことは。

 診療に関しては、「救急を断らない」「病診連携を進める」の二つに取り組んできました。幅広い領域の治療を数多く手掛けたことで、ここ数年の入院患者数もかなり増加しています。

 また、高齢の患者さんに適切な医療を提供するために、2016年から慢性心不全看護の認定看護師を中心としたハートチームカンファレンスを開始しました。看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士など多職種連携のもと、薬の飲み方から生活習慣まで、きめ細かな指導を徹底。その結果、再入院となるケースを約3割減らすことができました。

 研究においては、「奈良県のプラットホームでありたい」との思いで取り組んでいます。虚血性心疾患の研究では光干渉断層法(OCT)にかなり力を入れています。血管やプラークの状態が精密に把握できますので、検査や治療評価に利用するほか、疾患のメカニズム解明の足掛かりにしようと、10以上の研究が進行中です。

 病気が重複しやすい心臓と腎臓との関連、つまり心腎連関の病態や原因に関する分子機序の研究に注力してきたのも、特長の一つ。腎臓内科と一緒だった強みを生かし、仮説を立て臨床で確かめてきました。今も続行中で、新しい因子などが見つかっています。

 心不全の登録研究も活発。症例数は1000を超えています。

―「日本人糖尿病患者に対する低用量アスピリン療法の発がん性抑制効果」について発表。

 「低用量アスピリンの心血管疾患の一次予防の効果」について、全国2300人のデータを調べ、2008年に報告しました。明確な有意差は認められませんでしたが、その後も2年に1回フォローしていました。

 2017年に解析しなおすと、一次予防に効果が認められないだけでなく、むしろ消化管出血が増えることが判明。ところがサブ解析の中で、65歳未満に限定した対象者において、アスピリン療法にてがん発症が抑制されるという結果が出たのです。実際の適用についてはまだ未知数ですが、予後調査を続けており、興味深い治験結果はいくつか出ています。

 現在のフォロー数は約1600人。これはかかりつけ医の先生方が患者さんと信頼関係を築き、しっかり診てくださっているおかげ。本当にありがたいことです。

―これからの方向性は。

 奈良県立医科大学は、奈良県の〝ターミナルホスピタル〟です。その維持には、各分野に専門性の高い人材がそろっていなければなりません。そうでなければ、まず患者さんが困る。次に困るのは学生や研修医。そして、より良い教育を目指し、優秀な人材を集め、質の高い医療を提供するためには、腎臓内科と分離して、より専門性を高める必要がありました。

 私自身としては、DPCや経営について学んだことが、病院の発展を考えるのに役立っています。奈良県立医科大学の経営の地盤が固いのは、大学病院でありながら、地域に必要な医療を提供する役割も担っていることにあります。このようなニーズにもっと貢献できる体制づくりを、今後とも大切にしたいと思います。

 奈良県立医科大学がどのような医療人を育成するかは重要ですが、私の理想は、地域で患者さんに寄り添う人、中核病院で働く人、世界を目指す人を3分の1ずつの割合で育成すること。そう私は考えています。これからも足元を固めつつ、大きなビジョンで取り組んでいきたいですね。

奈良県立医科大学 循環器内科学教室
奈良県橿原市四条町840
☎0744―22―3051(代表)
http://www.naramed-u.ac.jp/~1int/

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