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臍帯血幹細胞治療 脳性まひ児に一定の効果

臍帯血幹細胞治療 脳性まひ児に一定の効果

 藤枝  幹也 教授(ふじえだ・みきや)
1984年高知医科大学医学部(現:高知大学医学部)卒業、同小児科入局。
高知県立宿毛病院小児科副医長、東京女子医科大学腎臓病センター小児科医療錬生、
米ハワイ大学留学などを経て、2012年から現職。

 子どもたちはそこに存在するだけで空間が明るくなる。生まれてくるすべての子どもたちは、たとえ障害があっても、みんな意味を持って送り出されてくるのだと思っている、と藤枝幹也教授は言う。

―教育体制については。

 当医局では、一般疾患から発達障害などの専門領域に至るまで、幅広い疾患に対応しています。また、専攻医と指導する医師の距離が近く、専攻医は各専門医の指導を受けながら、多岐にわたる症例を経験することができるのが特徴です。

 3年間の研修期間中には、地方の施設などで、地域医療を含めた小児全般の疾患が学べるようになっています。さらには、研究にも取り組んでもらえるよう、研修期間中、いつでも大学院生となれる体制も整えています。

―昨年、脳性まひの子に対する臍帯血治療の研究の途中経過を発表されました。

 高知大学臍帯血研究班(班長:前田長正教授)の基礎実験結果をベースに、2017年から、脳性まひの7歳未満の子どもに自身の臍帯血からとった臍帯血単核球を生理食塩水に溶かして静脈投与し、その後の運動機能の回復を見る臨床研究を行っています。

 もともと、臍帯血は白血病の治療などに使われていたのですが、2005年、アメリカのデューク大学で白血病の男児に臍帯血治療を行ったところ、併せて症状があった脳性まひについても改善が見られたというのが始まりで、国内外で脳性まひ治療への応用が模索されています。

 われわれの研究においても、実施した全6例で、運動機能の改善が見られるという結果が得られました。副反応などの問題も見られていません。また、意思疎通や言語能力の向上も感じられたという声も、ご家族の方からいただいています。現在は、まだ経過観察中ではありますが、ある一定の成果を感じているといったところです。

 ただ、この治療は、患者本人の臍帯血が保存されていない場合は、できない方法です。日本での臍帯血保存率は1%に満たないため、治療できる患者は限定的。さらに、保存していても今のところ投与回数は1回のみに限られてしまいます。複数回に分けて投与できないか、とご相談を受けることもあるのですが、臍帯血の幹細胞数が多いほど効果が高いことが報告されていますので、一度にすべての量を投与するようにしました。

 確かに、より良い効果を出すには複数回の投与が必要なのかもしれません。また、患者本人の臍帯血が保存されていない場合もあり、きょうだい間の臍帯血を使えないかという声が上がりはじめました。海外ではすでに治験が行われています。今後、日本でも動き始めたいと思っています。

―「第41回日本小児腎不全学会学術集会」も予定。

 11月28日(木)、29日(金)に高知市で開催。私が大会長を務めます。構想としては大きく二つ。まず一つは、災害時の対策についてです。大きな災害が起こった場合、物資が届かず人工透析に必要なものが不足する事態が考えられます。その対策を考えるシンポジウムを行いたいと思っています。

 もう一つは、低出生体重児に関する特別講演です。低出生体重児とは2500㌘未満で生まれる子どものことで、全国の新生児の約10%が当てはまります。それは日本の新生児医療が非常に優秀だからということもあります。

 実は、低出生体重児として生まれた子が、将来的に若くして生活習慣病を患いやすいことがわかってきました。小さく生まれた子どもは腎臓の中にある尿を作るための糸球体の数が少なく、成長とともに腎臓に負担が掛かりすぎてしまいます。早稲田大学の福岡秀興先生に、「DOHaD説からみた胎生期環境と腎臓循環器疾患」と題して、お話しいただく予定です。


高知大学医学部  小児思春期医学講座
高知県南国市岡豊町小蓮185―1
☎088―866―5811(代表)
https://kochi-pediatrics.jp/

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