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脳神経内科医を一人でも多く

脳神経内科医を一人でも多く

山形大学大学院医学系研究科 内科学第三講座神経学分野
教授(おおた・やすゆき)

2000年岡山大学医学部卒業。カナダ・ラバル大学医学部神経科学部門留学、
岡山大学病院神経内科(現:脳神経内科)などを経て、2020年から現職。

 2020年4月に就任した太田康之教授。なによりも日々の臨床の現場を大切にしつつ、いまだ解明されていない「脳」の神秘を探究し、一人でも多くの脳神経内科医を育てていきたいと抱負を語る。

脳神経内科医を育てるために

 1976年の創設から40年以上の歴史を刻む山形大学内科学第三講座。その中で脳神経内科は、脳卒中などの急性期疾患に対する先進医療をはじめ認知症、神経変性疾患など幅広い診療を行っている。太田教授は、改めて患者一人ひとりを丁寧に診る〝当たり前の診療〟の確実な実践と共に、脳神経内科医の数を増やす取り組みを始動させた。

 「全国と比べ脳神経内科医が少ない東北地方の中でも、山形県は際立っています。日本の神経学は関東を中心に全国へ拡大する過程で、人口の少ない地方が取り残された歴史的な経緯があり、脳神経内科医が偏在する背景になっています」

 脳神経内科が対象とする患者数は極めて多く、山形県には若い脳神経内科医が活躍できる大きな余地が残されている。「脳を探求する神経学の魅力を発信し、脳神経内科医を志す若者を一人でも多く増やし、一人前の医師に育て、活躍してもらうことが、私のミッションの一つです」

ミステリー小説に似た知的興奮に満ちて

 脳神経内科の魅力は「神経は全身に張り巡らされており、必然的にほぼすべての診療科と関わりを持ちます」と、全身の疾患を対象にした総合診療科の性格を持つダイナミックな点にあると語る。

 「疾患の原因を探る診断過程が極めて論理的で、集めた証拠を組み合わせて事件の真相に迫るミステリー小説によく似ています」と、知的興奮に満ちていることも強調する。

 大阪市生まれ、兵庫県加古川市育ち。学校が終わるとすぐ、友人と野原を駆け回った少年が、医学の道へ進むきっかけは級友の死だった。

 「ショックとともに、命と正面から向き合う医師という職業を強く意識するようになりました」

 脳神経内科に進んだのは「高校生の時に見たNHK特番がきっかけ。最新の脳研究に心が震え、挑戦してみたいと思いました」と、脳が脳を調べるパラドックスにも似た探求の旅に出た。

地域特性を生かしたコホート研究

 脳神経内科は、山形大学全体で取り組む地域住民を追跡調査するコホート研究での新知見において高い評価を得ている。同様の手法で行う脳神経内科の特発性正常圧水頭症の研究成果も顕著だ。

 「歩行障害、認知障害、排尿障害などを引き起こすこの病気は、認知症と間違われることがしばしばあり、見逃してはならない病気です。当教室の研究による新知見が認められ、診療ガイドラインに記載されると共に、厚労省による全国調査が実施されています」

 髄液が脳室に過剰流入して脳を圧迫する同疾患は、たまった髄液を装着したチューブで腹部へ抜くことにより改善する。ただし根元が治癒するものではない。
「圧迫される脳の部位により異なる障害が発生すると言われますが、実際のところはよく分かっていません。私は大脳各部を結ぶネットワークのダメージだと思っていますが、研究テーマの一つです」

 コホート研究が成果を上げる要因を太田教授は、山形県の地域特性にもあると考えている。「住民の移動が少なく、特定の集団や家族の継続的な観察が可能で、コホート研究におけるアドバンテージになっています。このコホート研究による新知見を、世界に発信することが、私のもう一つのミッションです」


山形市飯田西2-2-2 ☎️023-633-1122(代表)
http://www.int-med-3.jp/

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