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肝がんの要因が変化 病診連携で早期発見を

肝がんの要因が変化 病診連携で早期発見を

熊本大学大学院生命科学研究部 生体機能病態学講座 消化器内科学分野
田中 基彦 准教授(たなか・もとひこ)

1988年熊本大学医学部卒業。
国立療養所熊本南病院(現:国立病院機構熊本南病院)
NTT西日本九州病院(現:くまもと森都総合病院)
熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)消化器内科助手、同講師などを経て
2012年から現職。

 直接作用型抗ウイルス剤(DAA)の登場で、慢性ウイルス性肝炎の多くが内服薬のみで完治できる時代となった。一方で、糖尿病や脂肪肝といった生活習慣病を要因とする肝がんの発症の増加が懸念されている。その背景や課題について、田中基彦准教授に話を聞いた。

―医局での取り組みは。

 熊本大学の消化器内科学は2003年に開設されました。当時は初代である佐々木裕前教授と教員を合わせて、わずか3人の教室でした。現在は、9人の教員を含めて2教室全体で約30人が在籍するまでになりました。

 以前は三つの内科がそれぞれで消化器診療に取り組んでいましたが、消化器内科として再編成。大きく消化管・胆膵グループと肝臓グループに分けて体制を構築しました。

 これまでの研究で主なものとしては、がんの増殖進展についての解明と抑止の研究を続けています。現在は、学会報告を終えて、最終の段階に進んでいるところです。

 私自身は入局以来、肝臓グループに所属。肝がんや慢性肝疾患を専門分野として、臨床・研究を続けています。

―近年の肝疾患について教えてください。

 1989年にC型肝炎ウイルスが発見されて以来、慢性ウイルス性肝炎は、なかなか治らない疾患と認識されてきました。

 そうした中、2014年に直接作用型抗ウイルス剤(DAA)が登場。インターフェロンを使わず、内服だけの治療になり、C型慢性肝疾患からの発がん率・死亡数は大幅に減少するなど、大きく変わりました。

 その一方で、年齢や生活習慣病を危険因子とする肝がんについては、増加が顕著になっています。中でも過栄養によって生じる、肥満や糖尿病を起因とした肝がん患者は、著しく増加しています。

 肥満の方に多い単純性脂肪肝は、発がん率は低い。しかし、進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変へ、さらには肝がんへと進行することがあります。

 慢性肝疾患は、体に違和感や痛みがなく、患者さんが自覚症状を持ちづらいといった特徴があります。また、脂肪性肝疾患の治療といっても、アルコールや食事摂取を控えたり、運動をしたりと、自己管理がメインです。思うような効果が出ないことが少なくありません。

 実際に、糖尿病患者の主な死亡原因として、肝がんが上位であることが、研究によって明らかになっています。脂肪肝や糖尿病の人が、肝がんの予備軍となっているのは間違いないでしょう。

 将来に対するリスクを正しく知り、できるだけ初期のうちに生活習慣を見直すことが何よりも大切です。

―今後どのような医療を展開したいとお考えですか。

 一層の病診連携が大切になると感じています。

 NASHの患者数が増加していると言われる中、脂肪性肝疾患のすべての患者さんが、肝がんの予備軍になるかもしれない。そう考えると、従来のように消化器内科だけのスクリーニングでは、肝がんの発見にも限界があるのではないかと考えています。

 診療する側が高い意識を持ち続けなければ、かなり進行してしまった段階で、肝がんが発見される例が増えてくる可能性があります。定期的な検査を受けていない患者さんもいるわけですから、そのリスクはさらに高まります。

 初期のうちに気づいて生活習慣を見直せば、がんを予防できる確率が高まる。脂肪肝、糖尿病の患者に対して、定期的な検査を受けていただくために、専門医への紹介も積極的に行ってほしいと思っています。

 消化器内科のみでの診療ではカバーできない領域があります。他科の先生やかかりつけ医の先生方にも、「肝がん」について改めて意識を高くしていただき、病診連携をより強くしていきたいと考えています。

熊本大学大学院生命科学研究部 生体機能病態学講座 消化器内科学分野
熊本市中央区本荘1─1─1
☎096─344─2111(代表)
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/gastro/

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