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耳を傾け、情報を集める 臨床力の向上が育成のカギ

耳を傾け、情報を集める 臨床力の向上が育成のカギ

福岡大学医学部脳神経内科学
坪井 義夫 教授(つぼい・よしお)

2010年東邦大学医学部卒業。板橋中央総合病院、
東京都済生会中央病院、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)などを経て、
2019年から現職。

 4月、教室の名称が神経内科学から「」に変わった。「神経疾患を総合的にカバー」していることを改めて明確に示すためだ。超高齢社会を迎え、脳卒中やアルツハイマー型認知症、あるいは神経難病などの疾患に対する体制の整備が求められている。患者数は増加傾向にあると言われる中、重要なのはどのような点だろうか。

―近年の傾向は。

 アルツハイマー型をはじめとする認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患、高齢者てんかんなどが増えていると言われています。また、不整脈の心房細動によって血栓が形成され、心臓から脳動脈に流れ込んで脳卒中を発症するケースの報告も多い。

 例えば、福岡大学病院で受け入れているパーキンソン病の症例数は、私が教授に就任した2011年当時と比較して2倍を超えると思います。病診連携が密になってきたことも、増加の理由の一つでしょう。

 福岡大学病院の「福岡パーキンソン病診療センター」では、脳神経内科・外科、消化器外科、歯科口腔外科、リハビリテーション科、薬剤師、看護師、臨床心理士といったチームで診療する体制を整えています。治療薬の選択肢も広がっており、多剤併用、脳深部刺激療法(DBS)、腸に薬液を持続的に注入して症状の安定化を図る経腸療法など、高度な専門性が求められる治療法に取り組んでいます。

 専門外来としては、パーキンソン病外来、DBS外来、ボツリヌス治療外来は患者さんが特に増えている領域です。また、脳卒中外来、頭痛外来を開設。もの忘れ外来は福岡市認知症疾患医療センターへの紹介患者さんを対象に診療しています。脳卒中のベースには生活習慣がありますので、まずは地域の先生方にフォローしていただくことが重要だと考えています。将来的には「てんかん専門外来」を開設する計画です。

―福岡市認知症疾患医療センター長の立場でもある。

 2010年、福岡市は「認知症医療連携システム」を発足。福岡大学病院と九州大学病院に認知症疾患医療センターが設置されました。

 地域の医療機関のネットワーク化が進み、円滑な患者さんの紹介・逆紹介が確立されています。訪問看護やケアマネジャー、地域包括支援センターのスタッフなどとの定期的な交流の場が設けられているので「顔の見える連携」が構築できています。

 厚労省による「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」に基づく取り組みによって、認知症の人が自分らしく暮らせる地域に近づいていると感じています。

―人材の育成は。

 この領域はカバーする範囲が広く、しっかりと対応できる「臨床力のある医師」が求められています。その基礎となるのは、患者さんの訴えに耳を傾け、情報を集めて、適切に判断していく。それが必要な力ではないかと考えます。

 臨床の場で得た知識というのは、記憶に深く刻み込まれるものです。例えば当教室では、患者さんにボランティアとして協力していただき、数年前から「ライブ診察」を試みています。患者さんとのコミュニケーションなどを通して、診断を確定させるためのヒントをどのようにして上手に引き出していくか。学生たちが早い時期からイメージできる実習を心掛けています。それを最初から意識して患者さんの診療に当たることが、スキルの向上につながります。

 もう一つ、これからの時代を担う医師に期待したいのは、神経難病に関するチャレンジです。根本的な治療法が見つかっていない神経難病がたくさんあります。解決の方法を探るために一歩を踏み出してほしい。その過程ではリハビリの質の向上や、QOLを低下させない工夫など、さまざまな成果が得られると思います。

福岡大学医学部脳神経内科学
福岡市城南区七隈7─45─1
☎092─801─1011(代表)
http://www.med.fukuoka-u.ac.jp/in_healt/

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