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群馬大学医学部附属病院 病院長 田村 遵一

群馬大学医学部附属病院 病院長  田村  遵一

 2021年を迎えるにあたり、新年のごあいさつを申し上げます。

 2020年を振り返って見ると、まさに新型コロナウイルス感染症に振り回された一年でした。一昨年の2019年が、改元、新天皇即位、大阪G20首脳会議の開催など、日本にとっては明るい話題が多かった1年だけに、落差の大きさを感じさせられました。国民生活や経済に対する影響は計り知れず、まだまだ先が見えないことへの恐怖は非常に大きいものがあります。

 感染症でパニックになったことは何度もあります。近いところでは2000年代に入ってすぐにSARS、続いてMERSと、いずれもコロナウイルス感染症で大きな騒ぎとなりましたが、世界的なレベルで見るとそれほどの大流行とはならずに終息しました。

 1990年ごろのエイズパニックも思い出されます。当時は電車のつり革に触るのも怖い、といった風評で大変な社会不安を招きました。感染者の死亡率も恐るべきものでしたが、やがて感染性自体は高いものではないことが世間一般に認識されるとともにパニック状態は収まりました。

 また薬剤開発も進んで死亡率が激減したことから、いつの間にか警戒感が薄れてきて、感染症に対する油断が生じてきていたように思います。

 100年ほど前の、スペイン風邪大流行後は何度もインフルエンザ流行を経験しているものの、ワクチン開発や有効な抗ウイルス剤も開発され、われわれは感染症に対して比較的「鈍感」になっていたようです。

 人類の歴史レベルで考えれば、ペスト、コレラ、結核、マラリア等々、常に感染症との戦いを繰り返してきました。それなのに、この100年余りで病原体の特定や抗生剤の発見・改良および衛生環境の向上などが相まって、感染症をあまりシビアに捉えなくなっていました。

 感染症の大流行は、ほんの数カ月で地球全体を覆い尽くしてしまう点、広域災害と同じようなショックを社会に与えてしまいます。このような時こそ、国民は一致団結して流行のコントロールに立ち向かわなければなりません。

 医療現場はもちろん、行政の担当部署、あるいは患者輸送に関わる消防関係等々等々、関連する職に就いている人は皆必死に頑張っています。

 一般の方々もご理解いただき、不自由ではありますが国や自治体の要請に従って、ともに新型コロナウイルス感染症を乗り越えられるよう頑張りましょう。

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