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緑内障患者のQOLを守る認知度の向上が鍵

緑内障患者のQOLを守る認知度の向上が鍵

新潟大学大学院医歯学総合研究科  福地 健郎 教授(ふくち・たけお)
1985年新潟大学医学部卒業。米イリノイ大学シカゴ校留学、
新潟大学医歯学総合研究科講師などを経て、2012年から現職。


 失明をはじめとした視覚障害の原因のトップとなる緑内障。国内では40歳以上の20人に1人が罹患(りかん)していると言われる。代々緑内障を専門として発展してきた新潟大学の眼科学教室は100年余りの歴史を持つ。就任6年になる福地健郎教授に緑内障の治療の現状と課題について聞いた。

―緑内障の概要や現状について教えてください。

 緑内障の推定患者数は約400万人、有病率は年齢とともに増加することが分かっています。かつて平均寿命が短かった頃は症状が悪化せずに発見されにくかった面もありますが、近年は高齢化によって患者数は増加傾向にあり、かつ重症化するケースも多くなっています。

 目の中には房水という液体が循環していますが、ほぼ一定の圧力が発生することで眼球の形状が保たれます。これが眼圧と呼ばれるもので、目の硬さを示しています。ところが何らかの原因で眼圧が上昇すると、視神経が障害されて緑内障のリスクが高まります。緑内障は一部のものが少しずつ見えにくくなるという〝視野欠損〟がその主な症状です。

 ところが、軽症の場合、自分自身ではなかなか気づきにくいのも特徴の一つ。よって、自覚症状が出た時にはすでにかなり進行していることが多いのです。最悪の場合は失明に至ることもあります。


―診断については。

 診断には眼圧検査だけでなく眼底検査なども必要です。なぜなら眼圧が高くても緑内障でない場合もありますし、一方で正常な眼圧であっても緑内障ということもあるからです。

 緑内障の疫学調査として知られるいわゆる「多治見スタディ」によって、眼圧は正常範囲内にもかかわらず緑内障であるという正常眼圧緑内障が日本人には大変多いということも分かっています。

 緑内障と診断されたら、次は隅角検査を実施し、隅角が開いているのか、閉じているのかを調べます。隅角は房水の排出をする場所です。隅角が開いていれば開放隅角緑内障、閉じていれば閉塞隅角緑内障となり日本人の場合、約8割が開放隅角緑内障です。

 治療は眼圧を下げる点眼薬が基本。毎日の点眼薬で症状の進行を抑えますが、点眼薬などでコントロールできない重症の場合は手術の適応になります。現状では緑内障を完治させることは難しく手術は眼圧を下げることが目的となります。しかし、視野欠損がある状態でもそれが軽症であれば日常生活に困らない範囲に抑えて、上手にコントロールしながら付き合うことも大切な考え方でしょう。


―緑内障の治療にとって大切なことは。

 一生涯、点眼薬を続けることは患者さんにとって大きな負担です。しかも点眼薬は1種類では不十分で複数の組み合わせがほとんどです。使用方法も1種類目を点眼した後、時間を空けて2種類目を点眼するなど複雑ですので使用の継続と管理は課題です。

 医学的には効果的な組み合わせでも、結局、患者さんが継続できなければ意味がありません。私は逆の発想でまずは処方薬を絞り「これだけはやりましょう」と伝えて患者さんの負担を軽くするようにしています。

 また、緑内障の喫緊の課題は病気の認知度を上げ、検診や人間ドックでの早期発見を目指すこと。視野欠損はゆっくりと進むため症状に気づきにくく、40代ぐらいで眼底検査まで含めた緑内障検診が受けられるようになれば、早期に治療が始められ重症の患者さんを減らすことができます。

 学会などによる国や自治体への働きかけの動きもありますが、残念ながらまだ実現には至っていません。今後も、緑内障手術の適応やタイミングなど、最も効果的な治療方法を探るための研究に取り組んでいく方針です。


新潟大学大学院  眼科学分野
新潟市中央区旭町通1―757
☎025―227―2005(代表)
https://www.nuh.niigata-u.ac.jp/

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