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総合力と専門性を両立した内科学の在り方を探る

総合力と専門性を両立した内科学の在り方を探る

九州大学大学院医学研究院 (第三内科)
小川 佳宏 教授(おがわ・よしひろ)

1987年京都大学医学部卒業、同附属病院内科入局。
京都大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科助手、
東京医科歯科大学難治疾患研究所教授などを経て、2016年から現職。
2019年3月まで東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授兼任。


 五つの研究室がボーダレスに集まる九州大学病態制御内科学。木を専門領域、森を体全体に見立て「木も森も診るべきだ」と説く、小川佳宏教授の真意とは。

―教室運営、医師育成の特徴は。

 当教室は、総合内科学として内分泌代謝・糖尿病、血液、肝臓、膵臓、消化器の五つの研究室を有し、広範な領域をカバーしています。2年半前の着任当初、私は「全国的に臓器別内科が一般的な現在、複数の専門領域の医師・研究者が共存する意味は何なのか」と考えました。そして、今後は臓器別ではない総合内科学講座の在り方が問われてくるだろうと思ったのです。

 そこでまず、各領域が連携し、相互に活性化できる雰囲気をつくろうと研究室間の壁を壊して共通の実験室に。例えば消化器の研究をしている横で糖尿病の研究が行われるような体制にしました。若手研究者や臨床医は、自分の専門疾患が他領域とどう関係し、どう患者さんが診察されていくのか実感できます。特に肝臓や膵臓といった消化器系と内分泌代謝・糖尿病は密接に関係しています。教室内で他分野の研究手法が共有できるので、専門分野への応用もスムーズです。

 何より効果があったのはコミュニケーション。物理的な壁がなくなって会話が増え、信頼感や一体感がより強まったと感じています。

 医療は若い時に総合力をつけ、年次を重ねるごとに専門性を深めることが重要です。またマネジメントする立場では物事を俯瞰(ふかん)的に見る力が求められ、若いうちに臨床・研究を通じてそうした考えを身に付けることが大切です。研究も臨床もマネジメントも、総合力と専門性の両立が重要だと思っています。


―研究のテーマは。

 研究の醍醐味と使命は疾患の成因を解明し、新たな診断・治療を開発すること。対象は時代とともに変化し、方法論は進化しています。当教室では専門分野の壁を越えて、基礎研究と臨床研究を有機的に結びつけることを常に意識しています。

 私の専門分野でもある内分泌代謝・糖尿病領域は、日本人の糖尿病・肥満の発症進展に関連する背景因子を臨床データに基づいて探索し、基礎研究では慢性炎症とエピゲノム記憶をキーワードに発症メカニズムの解明と画期的治療法の開発を目指しています。内分泌疾患は希少かつ難治のものが多く、新たなアプローチにも取り組んでいます。

 肝臓領域は急性肝不全の全国屈指のハイボリュームセンターとして国内外に貢献。肝硬変・肝がんの原因として問題となっている非アルコール性脂肪肝炎は臨床研究と動物実験を組み合わせ、発症メカニズムの解明と新しい診断法・治療法の確立を目指しています。

 膵臓領域は神経内分泌腫瘍や膵がんの症例が多く、穿刺吸引細胞診・組織診から得られる検体を用いた臨床研究と基礎研究による転移や予後のメカニズムの解明に注力。消化器領域では、特に食道アカラシアに代表される機能性消化器疾患にフォーカス。生活習慣病との関連が注目されている腸内細菌や内分泌代謝疾患も重要なテーマです。血液領域では、次々に登場する治療薬と造血幹細胞移植を駆使して血液腫瘍の治療成績向上と耐性機序解明や合併症の克服を目指しています。

 臨床研究、診療、人材育成で関連病院との連携は重要です。当教室は関連病院も多く、お互いの役割を明確にし、緊密なコミュニケーションを進めています。今、臨床も研究も専門分化を極めています。大学と関連病院の連携を通じて、広い視野を持った専門家を育成していきたいと考えています。

 AIなどの進歩もあり、医療現場にも大きな変化が訪れるでしょう。新時代のリーダーを育てるため、新たな内科学の在り方をつくりたい。それができるポテンシャルが九大にはあると信じていますし、総合内科学講座の使命だと捉えています。


九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)
福岡市東区馬出3―1―1
☎092―641―1151(代表)
http://www.intmed3.med.kyushu-u.ac.jp/

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