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経営黒字化は通過点 より良い医療の提供に努力

経営黒字化は通過点 より良い医療の提供に努力

市立函館病院 森下 清文 院長(もりした・きよふみ)
1982年札幌医科大学医学部卒業。
市立函館病院心臓血管外科科長、同院副院長などを経て、2018年から現職。

 来年で開院160年を迎える道内最古の市立函館病院。がんゲノム医療連携病院に認定されるなど、レベルの高い医療を提供する道南エリアの基幹病院は昨年度、数年ぶりに黒字経営になったことでも注目される。公立病院の多くが赤字の中、どのように脱却を果たしたのか。森下清文院長に聞いた。

―入院患者がかなり増えましたね。

 当院は2013年度まで黒字経営を続けていましたが、国の医療費抑制策により赤字に転落しました。赤字幅は年ごとに拡大し、私が院長に就任する前年の2017年度はついに、収入に対する欠損金の割合が20%を超える寸前まで悪化しました。

 このラインを超えると自治体が財政再建団体に転落するように、公立病院も国の強い管理下に置かれ自主性を発揮することができなくなります。私を含め職員一丸となって黒字化に向けたさまざまな取り組みを行いました。

 その一つが入院患者の増加です。設備が立派なホテルも客が来なければ経営は成り立ちません。それと同じで病院も入院患者が増えなければ経営は上向かない。私たちは三つの方法を実施しました。

 一つは「逆紹介」。紹介患者数を増やすため、状態が安定している当院の患者さんを積極的に近隣医院へ紹介し、パイプを太くするというもの。民間病院では以前からよく行われている手法ですが、当院にとっては初めての試みとなりました。

 二つ目は紹介患者の予約時間を大幅に短縮したこと。以前は3~4日かかっていましたが、予約枠をあらかじめ一定数確保しておく「自動枠」の設定により、現在は紹介患者の85%が2時間以内で予約可能です。

 三つ目は管内の病院や医院をまわって患者の紹介を直接お願いする「営業」です。私自身が訪ね歩き、8カ月間で100軒まわりました。公立病院では前例のない取り組みだと思います。

 並行して職員専用の院内ホームページに、入院患者数が目標ラインに到達しているか、ひと目で分かるグラフを掲載するなど、現状を具体的な数値で示す「見える化」を進めました。これらにより入院患者数は月100人、年間1200人増えました。

―給与を含めたコストカットも断行しましたね。

 冒頭で述べたように当院の経営状況はデッドライン寸前であり、給与カットが避けられない状態であることを職員も納得していましたので、粛々と実施することができました。

 また同時に行った医療材料費の削減も予想以上に進み、コストカットは6億円に達しました。結果、入院患者の増加による収入増と合わせ、全体で1億円の黒字を出すことができました。

 好転したのは経営ばかりではありません。改革に伴うさまざまな活動によって職員の意識が飛躍的に高まり、院内の活性化が図られたことが真のメリットだと私は思っています。

 例えば院内の取り組みは従来、経営トップだけで決定していましたが、私はこれを改め、職員も参加する経営会議を開き、現場の声を可能な限り吸い上げることに努めました。会議に上がった課題の解決は、職域を横断して構成する担当チームを結成し、解決にあたるようにしました。私はこれを「チーム分担制」と呼んでいます。

 この活動が院内活性化に極めて良い影響を与えました。旧医局スペースを利用した患者サポートセンターの設立や、28種類のシミュレーターを備える本格的なスキルラボ室の開設など、当院としての新しい試みはチーム活動の成果です。

 言うまでもなく、私たちは市民に喜ばれる医療提供が使命であり、黒字化はそのための通過点に過ぎません。今後も良いと思うことを積極的に取り入れ、実行していきます。

市立函館病院
北海道函館市港町1―10―1
☎0138―43―2000(代表)
https://www.hospital.hakodate.hokkaido.jp/

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