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組織の改革によって救急医療はどう変わったか

組織の改革によって救急医療はどう変わったか

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 
垣花 泰之 教授(かきはな・やすゆき)

1986年鹿児島大学医学部卒業、同麻酔科入局。
北海道大学応用電気研究所、独エアランゲン・ニュルンベルク大学留学、
鹿児島大学医学部附属病院集中治療部などを経て、2011年から現職。

 鹿児島大学病院は、2007年度から大規模な再開発計画を進めている。組織の統合や連携による機能強化にも積極的に取り組んでおり、その一環として、2011年に「救急・集中治療医学分野」が生まれた。県の救急医療の現状や課題は。初代教授である垣花泰之教授に聞いた。

―現在の体制に至るまでの背景を教えてください。

 異なる組織だった救急部と集中治療部(ICU)を統合して、2011年、当学の大学院医歯学総合研究科に救急・集中治療医学分野を新設。私が初代教授に就任しました。

 2014年にヘリポートを備えた新病棟が完成。救命救急センターの活動がスタートしました。私はセンター長も兼任しています。救命救急センターと集中治療部を2本柱に医師、看護師が一体となったチーム医療を推進。高度な医療が必要な重症の患者さんを中心に、24時間体制で診療に当たっています。

 ここ鹿児島県に暮らす患者さんの生命を守る「医療の最後の砦(とりで)」という強い思いのもと、質の高い医療と診療環境の充実を目指しています。

 現在の組織のかたちに至るまでには、大きく二つのポイントがありました。

 一つは2004年に開始された新医師臨床研修制度です。新たな制度の中で学生たちに引き続き残ってもらうには、どうしたらいいか。そのヒントを得るためにアンケートを実施したところ「救急医療を学びたい」との声が非常に多かったのです。そこで、それまで鹿児島大学になかった救急医療の学問領域を整備し、学生の声に応えようと考えました。

 もう一つは、県内の救命救急センターが鹿児島市立病院のみだったことです。課題の解消を目指す上でも、鹿児島大学の救命救急センター開設は欠かせませんでした。また、救急医療を支える人材の安定的な確保につながるのではないかとの思いもありました。

 この統合によって、救急部と集中治療部の連携はさらに密なものとなり、重症患者への対応力が高まったと実感しています。

―離島、へき地医療の現状について。

 鹿児島県には、南北およそ600㎞に及ぶ県域に600を超える離島があります。ドクターヘリの運航距離は300㎞ほど。対応できない地域があったのですが、2016年に鹿児島県立大島病院(奄美市)でドクターヘリの運航が始まり、県内全域をカバーできるようになりました。

 県立大島病院の救命救急センターは離島医療の拠点です。しかしながら、継続的なマンパワーの確保、維持が難しい。当センターとしても、人的交流や定期的なテレビカンファレンスの実施などを通じて、しっかりと支援していきたいと考えています。

―育成に関してはどのような点を重視していますか。

 救急・集中治療医学分野のテーマとして「診療」「教育」「研究」を掲げています。近年の主な研究に「心肺蘇生に対する水素ガス吸入療法」「光を用いた脳の酸素化状態モニタリング法の開発」などがあります。基礎、臨床の両面で国内外の施設と協力して研究を行っています。

 鹿児島県には活火山の桜島がありますから、大規模災害への備えが不可欠です。もし爆発的に噴火したらー。そのときに国や自治体がどう動くべきか、事前にどんな対策を講じておく必要があるか。まだ明確な方針が定まっていないのが現状です。

 噴火による降灰や地震、津波による被害、原子力災害。これまで起こった災害を踏まえて、患者の搬送手段や必要な医薬品、水・食糧の備蓄などの検討も進めているところです。

 鹿児島県の基幹災害拠点病院である鹿児島市立病院と連携を図りながら、それぞれの施設の強みを生かした訓練計画の作成にも着手しています。

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 救急・集中治療医学分野
鹿児島市桜ケ丘8─35─1
☎099─275─5111(代表)
https://com.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~icu/

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