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終末期の「腹膜透析」で通院負担の軽減図りたい

終末期の「腹膜透析」で通院負担の軽減図りたい


准教授(みやぞの・もとあき)

1993年佐賀医科大学(現:佐賀大学)医学部卒業。
高木病院、米コロラド大学健康科学センター留学、佐賀大学医学部腎臓内科講師などを経て、
2020年から現職。

 新たな国民病とも言われる慢性腎臓病(CKD)を含めた腎臓疾患の診療、病態解明を行う佐賀大学医学部腎臓内科研究室。教室を率いる宮園素明准教授に、腎臓が担う役割、CKDや透析への対応、研究内容について聞いた。

―腎臓の役割とは。

 腎臓は腰より少し上の背中側に左右一つずつあり、長さ約10㌢、重さ約150㌘で形はソラマメに似ています。内部は毛細血管が球状に絡んだ「糸球体」と、そこから伸びる「尿細管」で構成される微小なろ過装置が集合しています。

 目の細かさが異なる3枚のフィルターを重ねたような特殊な血管壁を持つ糸球体の毛細血管が、タンパクなど大きな分子は通過させず、水分やミネラル、小さな分子や毒素などを尿細管にこし出します。

 この原尿が尿細管を通過する間に、必要な水分やミネラル、アミノ酸などは再吸収されます。不必要な毒素や水分、ミネラルは最終的に集合管を経てぼうこうから尿として排泄されます。原尿は1日150㍑も作られますが、私たちが排泄する尿はそのわずか1%で、1日平均1・5㍑。毒素を取り除いた後のものがほぼ再利用されており、腎臓は極めて効率のいいリサイクル装置と言えます。

―CKDの定義と予防の周知に向けた取り組みは。

 腎臓はさまざまな役割を持っており健康維持のために欠かすことのできない臓器ですが、国内の成人8人のうち1人がCKD患者と言われています。CKDは腎臓機能が健康な人の60%以下に低下するか、尿の異常、画像・血液・病理での腎障害のいずれかが3カ月以上続いている状態を指し、進行すると人工透析や腎移植が必要で、心筋梗塞などの発症にも影響します。

 診断の際は、血清クレアチニンと年齢、性別を基に計算した推算糸球体ろ過量により重症度を判断します。当研究室では持続血液ろ過、血漿(けっしょう)交換などを含め症状に応じた血液浄化法を各診療科と協力して実施しています。

 佐賀市の医療従事者らと「佐賀CKD治療連携研究会」を2015年に発足させました。学術集会や講演会の開催、地域住民に対する啓発活動を行っています。また、当院糖尿病内科ならびに行政と佐賀県糖尿病重症化予防対策を推進しており、今後も予防や対策のために連携を強化します。


―力を入れている分野は。

 透析医療の終末期における選択肢である「腹膜透析」のあり方の検討を進めています。腹膜透析は、腹膜を半透膜として利用する方法です。専用のカテーテルを腹部に入れ、腹腔内に透析液を満たすことで血液中の毒素を移動させます。

 血液透析に比べ循環動態に大きな影響を与えず、心血管系に負担が少ないのも特徴。在宅でできる点が血液透析と大きく異なります。

 患者の通院の負担を軽減できるほか、血液透析では血液を大量に取り出すための「シャント」を手術で作成する必要がありますが、長い間使い続けると不具合が生じる可能性があることが問題視されてきました。

 佐賀県内では腹膜透析を利用する患者さんが全国と比べて少ないですが、終末期や高齢化を考えた場合、患者さんやご家族の残された時間やQOLの保持につながれば、腹膜透析を選択する人が増え、今後はニーズが高まるのではないかと考えています。

 治療法が確立されていない急性腎不全の治療も大きな研究テーマの一つで、体に悪影響を与えにくい治療法の検討を重ねています。

 また慢性腎臓病においても新たな薬剤や治療法の模索が進められており、腎障害の進行抑制効果が期待されています。腎臓の病気には未知の部分が多く残されており、研究室の若手医師たちには、世界に羽ばたきたいという大きな希望を持って研究にまい進してほしいと願っています。

佐賀大学医学部腎臓内科研究室
佐賀市鍋島5―1―1
☎︎0952―31―6511(代表)
http://sadaijinken.med.saga-u.ac.jp/

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