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糖尿病の治療 研究に挑む

糖尿病の治療 研究に挑む

秋田大学大学院医学系研究科
代謝・内分泌内科学講座

脇 裕典 教授(わき・ひろのり)
1997年東京大学医学部卒業。米カリフォルニア大学
ロサンゼルス校、東京大学医学系研究科代謝・
栄養病態学准教授などを経て、2021年から現職。

 基礎・臨床ともに研究が盛んな秋田大学大学院医学系研究科代謝・内分泌内科学講座に赴任した脇裕典教授。これまでの脂肪や肥満の研究をどのように発展させていくのか。秋田県の地域医療の課題とともに話を聞いた。


東京から秋田へ

 出身は福岡県。東京大学医学部に進み留学も経て、医師としての経験を重ねてきた。秋田県にゆかりはなかったものの、「基礎研究の共同研究で何度も訪れたことがあり、東北の中では最も親しみがありました。雪国での生活は初めてですが、田園が広がる美しいところです」

 秋田大学ではこれまで、先代教授の山田祐一郎氏が主導して、現在糖尿病治療で最も注目されている消化管ホルモン・インクレチンのさまざまな臓器における作用の研究が展開されてきた。今後は、自身の研究テーマである脂肪細胞や肥満に関する研究とさまざまな臓器の研究を融合していきたいと考えている。「脂肪細胞に着目した肥満の治療法開発で糖尿病を上流から予防するとともに、糖尿病の合併症や併存症である腎症、サルコペニアやアルツハイマーなど、多臓器連関のメカニズムに注目し、それぞれを車の両輪のように研究を展開していきたいと考えています」

 糖尿病の要因となる肥満をコントロールするには、食事と運動が重要であることは変わらない。秋田県でも減量・代謝改善手術が始まるなど明るいニュースがある。「減量手術は大変優れており、今後も有力な選択肢ですが、誰にでも使える治療法ではありません。今後、新たな治療が発見され選択肢が広がる必要があると感じています」


臨床の力が問われる時代

 秋田県は、糖尿病患者が多く、肥満も問題になっている。その原因の運動に直結する歩数が、全国平均よりかなり少ないという結果もある。「冬は雪に閉ざされて、車の移動が多く、肥満や2型糖尿病になりやすい環境があると考えられます」

 高齢者の独居世帯や老老介護も見過ごせない。その際に問題になるのが自宅でのセルフケアだ。「インスリン注射や血糖値の測定が難しいケースでは、訪問看護や施設利用など社会的な環境を調整する必要があります」。一人一人の患者を診て、最新の科学的知識とも照らし合わせながら、どのような治療が適切なのか見極める、臨床の力が問われる時代だという。

 もう一つの課題は、秋田県の広さだ。通院している糖尿病患者は3万人近くいるとされる。「かかりつけの先生とうまく連携して、コントロールが難しい患者さんに対しては病診連携を強め、対応していきたいと思っています」

 解決策として、自宅でのセルフケアのオンライン化は有力な切り札の一つと言われている。「糖尿病は在宅のセルフケア行動が非常に重要です。最近は、グルコースモニタリングのセンサーを体につけておくと、オンラインで病院でも血糖値が継続的に見ることができる装置もできており、環境の整備は必要ですが、臨床に応用されていくでしょう」


臨床や研究で得た疑問を起点に

 幸いにも教室は比較的多くの若手が集まってきている。その中で、どのような人材を育成していくのか。「臨床でも研究でも『なぜだろう』と思うことを大切にしてほしいと思っています。それらを一歩一歩広げてきた結果、今の医療は発展してきました。ただし、その底にあるのは一人一人の患者さんを診察するとき『どうしたらいいだろう』の部分」。一人一人の患者に向き合い、その部分を大切にしてほしいと願う。

 一方で、海外に留学し、世界中から集まる研究者たちと肩を並べ、仕事をすることも経験してほしいと語る。「疑問を追求し、夢を追求できる教室であり続けるよう努めていきます」


秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座
秋田市本道1-1-1 ☎018-884-6769
https://www.hos.akita-u.ac.jp/departmentlist/diabetes_
and_endocrinology_geriatric_medicine.html

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