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糖尿病から消化器がんまで質の高い医療を

糖尿病から消化器がんまで質の高い医療を

奈良県立医科大学 内科学第三講座(消化器・内分泌代謝内科)
𠮷治 仁志 主任教授(よしじ・ひとし)
1987年奈良県立医科大学卒業。米国立衛生研究所・国立がん研究所留学、
奈良県立医科大学内科学第三講座准教授などを経て、2015年から現職。

 消化器と内分泌代謝内科を合わせて診療する内科学第三講座。生活習慣病の増加に伴い、肝疾患や消化器がんなど、カバーする領域の患者は増加の一途をたどる。外来患者は年間約4万人。奈良県唯一の肝疾患診療連携拠点病院として啓発活動にも注力する𠮷治仁志主任教授に聞いた。

―疾患の現状について。

 B型・C型ウイルス以外の肝疾患が増えています。その最多はアルコール要因ですが、急増しているのは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)。日本肝臓学会の調査では2018年、肝硬変の原因の4割に上りました。

 糖尿病患者が増えるのと並行して、肥満による脂肪肝も増加。脂肪肝は心疾患や慢性腎臓病、胆石などさまざまな病気を引き起こすことが分かっており、油断できません。

 日本病院会のデータでは、人間ドックを受けた人のうち2割は糖尿病。3割が肥満で肝機能障害を持ち、その多くが脂肪肝です。脂肪肝は全国に1000万人以上、それが進行したNASHは200万人いると言われています。さらに、糖尿病を合併した脂肪肝では8割がNASHという結果も。糖尿病で亡くなる原因は、実は肝疾患によるものが最多。当科では、生活習慣病による肝疾患に対しても常に最新の治療で臨んでいます。

 消化器疾患に関しては、食道がん、すい臓がん、大腸がんが増加しており、生活習慣病に伴う変化によるところが大きい。耐糖能障害と消化器を一緒に診る当科のアドバンテージは大きいと思っています。

―肝炎検査を積極的にPR。広報にも力を入れています。

 奈良県のB型・C型肝炎の検診率は全国最下位。県内で治療の必要性がある人は1万人以上とも言われています。

 そこで県唯一の「肝疾患診療連携拠点病院」として、県が指定した肝疾患の専門医療機関と協力。肝疾患コーディネーターによる啓発活動を各地で進めています。加えて、特に高齢者へのアウトリーチとして農協や郵便局との連携を考えているところです。

 一般向けには、市民公開講座や、昨年と一昨年には県の一大イベント「奈良マラソン」会場ステージでのトークショーも行いました。肝疾患は心臓や呼吸器の疾患と違い自覚症状が少ないので、引き続き早めの検診を訴え続けていく必要があります。

 がんの半分は消化器がんと言われる中、奈良県はがん検診率も芳しくありません。今後も行政と相談しながら策を練っていきます。

 診療レベルの底上げになればと始めたのが、各領域の第一線で活躍する先生を招いて開く「奈良消化器代謝セミナー」です。学会に行く時間がない実地医家の先生方に最先端の話を聞いてもらおうと60回ほど開催。「明日からの診療に役立つ」との声を励みに、今後も続けていく予定です。

―後進の育成や、医局の展望について。

 奈良県には大きな病院が少なく中規模病院がほとんど。となると一人の内科医が広い領域を診る必要がある。そこで専門分野を確立しつつも、一般診療がしっかりできる医師の育成を心掛けています。これは奈良の特色で、初代教授からの伝統でもあります。

 診療については、肝硬変診療ガイドラインの委員長を務めていることもあり、県内のどの地域でも日本のスタンダードな診療を受けられる体制づくりを進めることが責務だと思っています。研究に関しては世界に通用するレベルを保つこと。現在も新たな治療法を目指し、免疫から代謝、発育異常に至るまで多岐にわたる研究を進めています。

 これからも、奈良県の医療に貢献するとともに世界に向けて発信を続けたい。足元を固めつつ高みを目指す―忘れてはならない志だと心に留めています。

奈良県立医科大学 内科学第三講座(消化器・内分泌代謝内科)
奈良県橿原市四条町840
☎0744―22―3051(代表)
http://www.naramed-u.ac.jp/~3int/

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