九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

精神医療の拠点として 地域とつくる「こころの健康」

精神医療の拠点として 地域とつくる「こころの健康」

神経精神科学講座
教授(おおつか・ こうたろう)

1997年岩手医科大学医学部卒業、神経精神科学講座入局。
同災害・地域精神医学講座特命教授などを経て、2016年から現職。
岩手県こころのケアセンター副センター長兼任。

 岩手医科大学神経精神科学講座の大塚耕太郎教授。岩手県こころのケアセンター副センター長も務め、自殺予防や東日本大震災の影響で心身の不調を訴える人たちのケアにも力を注ぐ。

—講座の強みは。

 精神科の救急医療が可能だという点が、特徴の一つ。精神科医が24時間365日体制で、心の危機にある患者さんにスタッフ一同向き合っています。

 この9月には新たな岩手医科大学附属病院がオープンし、児童精神科の外来・入院もスタートしました。大学病院の敷地内には「いわてこどもケアセンター」も併設されています。子どもから大人まで受け入れることができるのもわれわれの大きな強みだと思います。

 さらに、多くの診療科を有する大学病院にある精神科として、身体疾患がある方のメンタルケアにも取り組んでいます。

—災害医療にも積極的に取り組まれています。

 2011年の東日本大震災後は、県の委託を受けて「岩手県こころのケアセンター」での活動に従事。また、災害派遣精神医療チーム(DPAT)として、2018年の北海道地震の被災地などにも赴いています。

 東日本大震災のストレスによって心身の不調を訴える方への支援を、今も続けています。岩手県は、津波による被害を受けた沿岸地域7カ所で「震災こころの相談室」を開設。私たちの講座や全国の精神医学にかかわる講座にも支援していただき、保健師らとともに相談に応じてきました。今後も継続していきたいと思っています。

—自殺予防にも力を入れているそうですね。

 東北は、全国的に見ても自殺死亡率が高い地域。2018年の統計を見ると、東北全県で全国平均を上回っているのが現状です。

 自ら死を選ぶ人を一人でも減らしたい。そこで、救命救急センターに搬送されてきた自殺未遂者に対するケアに努めてきました。

 岩手医科大学附属病院では10年以上前に、高度救命救急センターに精神科医が常駐する体制を整備。自殺未遂を繰り返す人が少しでも減るように、搬送されてきた当初から、身体的な治療と並行して、精神的な治療も続けます。

 日本精神科救急学会や日本臨床救急医学会による精神科救急、一般救急の従事者向けのガイドラインや手引が作成され、私も策定に携わっています。危機的な状況である自殺未遂者やそのほか精神科的症状がある患者さんに対して、適切で安全な初期診療ができるように—。そんな思いと必要なノウハウが盛り込まれています。

—今後の課題や展望は。

 精神疾患の患者さんを取り巻く環境は、変化しつつあると思います。受診のハードルは下がり、薬物治療が大きく進歩したことで「精神疾患=長期入院」でもなくなりつつあります。精神疾患と共存しながら、地域で過ごせるようになってきました。

 しかし、それでも受診に抵抗がある患者さんは少なくありません。精神科がある医療機関に足を運ぶことができない方に対して、何ができるのか—。もっと地域の中に入っていって、悩んでいる人たちをサポートしたい、というのが今の率直な思いです。

 精神科領域の治療においては、一つの支援で足りるということは決してありません。社会資源が少ない、医療が十分に届かないといった地域の問題を、住民みんなで見つめ、捉えた上で、支え合って、「こころの健康」を図っていくことが重要です。

 だからこそ、私たちのこれまでの研究成果やノウハウを地域の医療職の方だけでなく住民の方々にも、伝えていきたいですね。連携しながら、安心して暮らせる地域づくりにも力を入れていきたいと思います。

岩手医科大学 神経精神科学講座
岩手県紫波郡矢巾町医大通2—1—1
☎019—613—7111(代表)
https://www.hosp.iwate-med.ac.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram has returned invalid data.

コメントはこちらから

メニューを閉じる