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筋ジストロフィーを柱に新しい治療法への挑戦も

筋ジストロフィーを柱に新しい治療法への挑戦も

兵庫医科大学小児科学講座 竹島 泰弘 主任教授(たけしま・やすひろ)
1986年神戸大学医学部卒業。
同大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野こども急性疾患学部門特命教授などを経て、
2014年から現職。


 兵庫県・阪神医療圏の総合周産期母子医療センター、。小児科学講座4代目の竹島泰弘主任教授は難病の筋ジストロフィーが専門だ。治療法の開発にも深く関わる。

―筋ジストロフィーとは。

  筋ジストロフィーはデュシェンヌ型や比較的症状が軽いベッカー型などがありますが、患者さんの数としてはデュシェンヌ型の方が多数を占めます。

 ベッカー型の場合、症状が軽いため診断がついていないケースもあるのではないかと考えています。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は進行性の筋萎縮症で男の子のみに発症します。出生男児約3500人に1人の割合で発症すると言われており、女の子は因子があっても発症しません。

 3歳から5歳ぐらいで転びやすい、階段を上りにくいといった歩行に関する症状が現れます。その後は徐々に筋力が低下し、小学校高学年くらいで歩行が難しくなり、車椅子での生活となります。

 さらに年齢を経ていくと関節の拘縮(こうしゅく)や背骨の変形が進行し、20歳前後になると呼吸不全、心不全が進行し、やがて死に至ることもあります。

 原因は、筋肉の細胞の構造を維持するジストロフィンの遺伝子に変異が起こるためです。この変異によってジストロフィンというタンパク質が産生されなくなりDMDを発症します。患者さん本人は症状として特に痛みはないのですが、進行性の筋力の低下を認めます。


―DMDの治療法などは

 ジストロフィン遺伝子が原因遺伝子であることが突き止められたものの根本的な治療薬はまだ開発されていません。

 早期には理学療法を取り入れ、関節などが固くなることを予防するようにします。進行に伴い摂食嚥下(えんげ)訓練などを取り入れることも有用です。

 また、ステロイドホルモンによる治療は、骨格筋障害への有効性が示され、2013年に保険が適用されました。ステロイドホルモン治療により歩行できる期間が延びるということは明らかになりましたが、歩行期間が延びるとはいっても、症状は進行します。そのため、根治療法の開発が求められています。


―新たな治療法の開発に関わってこられました。

 神戸大学小児科のグループが長年取り組んできた治療法で、デュシェンヌ型を症状の軽いベッカー型に変えるという考え方に基づく「エクソン・スキップ誘導治療」という治療法開発に取り組んでいます。

 ジストロフィンの遺伝子の一部が欠けて、そこでタンパクの合成が止まっている場合に、欠けた部分に隣接する領域に結合する合成核酸を用い、隣接する領域のスキッピングを誘導すると、タンパクの合成を再開することができます。

 そうすることで正常なジストロフィンとは一部違いますが、筋肉の細胞の構造を維持するための機能を持つジストロフィンの発現を誘導でき、症状の改善が期待できるのです。現在治験が行われている状況ですが、うまくいけば数年以内の承認が期待されています。


―課題などは。

 神経筋疾患のみではなく、新生児・腎疾患・アレルギー疾患など、広く小児疾患に対応し、子どもたちの健やかな成長を応援していきたいです。

 また、遺伝性疾患の症例では、時に親御さんが自分を責めてしまうことがあります。そのような場合、「ほとんどの人がいくつかの疾患に関わる遺伝子の変異を持っており、誰が悪いわけでもない」ということなどを丁寧に説明し、当院の遺伝子医療部と連携しながら精神的なサポートにも目配りをしていきます。


兵庫医科大学小児科学講座
兵庫県西宮市武庫川町1―1
☎0798―45―6111(代表)
https://www.hyo-med.ac.jp/department/ped/

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