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第61回日本小児神経学会学術集会 多様性が支える小児神経学

第61回日本小児神経学会学術集会 多様性が支える小児神経学

 「第61回日本小児神経学会学術集会」が5月31日(金)~6月2日(日)、名古屋市で開かれる。キーワードは「多様性」。会長を務める名古屋市立大学の齋藤伸治教授は「医学的な側面だけでなく、社会との接点も意識した内容です」と話す。

グローバルに議論を広げていきたい

 小児神経学は、脳や末梢神経、筋肉に関わる疾患を扱います。対象として発達・心理の領域も含んでおり、非常に幅広い分野です。疾患で多く見られるのはてんかんや熱性けいれん。20人に1人程度の割合で発症するとされる熱性けいれんは、病気というより「体質」に近いと言えるでしょう。

 自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害は人口の5%、知的障害は2%と言われています。患者、そして診療に関わる医師の数が多く、勤務先は療育センターや発達支援センターなど、病院に限りません。学術集会は、こうした「小児神経学の多様性」を切り口としました。学術的な内容、実践的な内容と、それぞれに多彩なプログラムを準備しています。

 また、日曜日に初心者向けの教育講演を組み込むなど、できるだけ開業医の先生たちも参加しやすいスケジュールを意識しました。 初めての試みとして「第20回乳幼児けいれん研究会国際シンポジウム(ISS)」と合同で開催します。

 ISSは、小児神経学会の創立メンバーの1人で、東京女子医科大学名誉教授を務められた福山幸夫先生が「世界に向けた情報発信」をコンセプトに設立した専門性の高い研究会です。合同開催に至ったのは海外の参加者を伸ばしたいと考えている小児神経学会、活性化を図りたいと考えているISSに相乗効果が見込めると考えたためです。

 学問をさらに発展させていく上で、国際化の推進は欠かせません。グローバル化に関連するプログラムとして、例えば海外で活躍する女性による「男女共同参画」をテーマにした企画も用意しました。


新たな治療薬の登場がもたらした可能性

 今回、多くの演題で「遺伝性疾患の治療」が取り上げられています。「診断できても治せない」とされてきましたが、近年、新たに登場した治療薬が注目されています。

 海外招待講演では、国の指定難病である「脆弱X症候群」の治療について、米国のランディ・ハガーマン医師が解説します。また、バイオジェン・ジャパン株式会社との共催シンポジウムでは、2017年に日本でも販売が開始された「脊髄性筋萎縮症(SMA)」の治療薬について報告します。

 ウェルドニッヒ・ホフマン病とも呼ばれるSMAの発症率は1万人に1人。乳児期に発症し、2歳ごろに亡くなるケースが多い。遺伝子の異常によって脊髄にある筋肉を動かすための神経が障害され、体が動かせなくなるのです。

 新たなSMAの治療薬は遺伝子に直接作用し、進行を遅らせることが可能です。4カ月に1度、5ccを髄注。高額なものの、効果が期待できるとあって、治療に用いられる機会が増えているようです。この薬の登場によって、すべての遺伝性疾患で治療の道が開ける可能性が示されたと言えます。非常に大きなインパクトです。

 早期に治療を開始するほど高い効果が期待できます。ただし、症状が進行してから発見されるケースが多くを占めている現状があります。台湾では新生児スクリーニングが実施されており、症状が現れる前に治療を開始できる仕組みがあります。疾患のメカニズムがさらに解明されていく中で、国内の健診や診療のアプローチも変化していくのではないでしょうか。

 治療法の幅が広がり、人工呼吸器などの医療機器の小型化も進みました。障害がある子どもが学校に通い、社会に出ていく時代に入り、医療はもちろん、教育的な支援の整備が重要です。

 6月2日の市民公開講座では、国会で医療的ケア児に関する問題を訴えてきた野田聖子衆議院議員も登壇します。子どもたちが幸せに暮らせる社会にするために、どう支えるべきか。みなさんと考えたいと思います。


学術集会の主なプログラム
●多様性が支える小児神経学:小児神経学の未来を探る(会長講演)
5月31日(金)午前8時25分~同8時55分
齋藤 伸治氏[名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野教授]
●Targeted Treatments for Fragile X Syndrome(海外招待講演)
6月1日(土)午前9時~同10時
Randi J. Hagerman[カリフォルニア大学デービス校]
●小児てんかん診療における初めの一歩:最近の変化と望まれる対応(教育講演)
6月2日(日)午前9時~同10時
浜野 晋一郎氏 (埼玉県立小児医療センター神経科)

会期:5月31日(金)~6月2日(日) 会場:名古屋国際会議場
運営事務局:株式会社コングレ 中部支社内 ☎052-950-3369
学会HP:http://www.congre.co.jp/childneuro2019/child_neurology.html



名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野教授
会長 齋藤 伸治 氏(さいとう・しんじ)
1985年北海道大学医学部卒業。同附属病院小児科、長崎大学原爆後障害医療研究所(原研遺伝)研究生、米ケース・ウエスタン・リザーブ大学などを経て、2011年から現職。

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