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第45回 日本診療情報管理学会学術大会 あしたを担う lnformation Literacy

第45回 日本診療情報管理学会学術大会 あしたを担う  lnformation Literacy

 「あしたを担う lnformation Literacy」をテーマに掲げた「第45回日本診療情報管理学会学術大会」(大会長=齊藤正伸・独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター院長)が、9月19、20日の2日間にわたって、大阪市のグランフロント大阪「ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター」で開かれた。病院経営に携わる医師をはじめ事務関係者や診療情報管理士など約2400人が参加した。



●基調講演
「厚生労働省が進めるデータヘルス改革」
(厚生労働省政策統括官付情報化担当参事官室政策企画官)

 厚労省が進めているデータヘルス改革について講演した笹子宗一郎氏。厚労省の政策担当者として幅広い分野に関わってきたほか、経済産業省、外務省などにも勤務した。

 講演では、まず高齢化が急速なスピードで進行するわが国において、厚労省としてデータヘルス改革に取り組む狙いを述べた。

 それによると「健康や医療そして介護分野でICT(情報通信技術)化を進めることで、国民や患者一人ひとりが、自分自身の健診結果をはじめとしたさまざまなデータを活用したり、現場の医療従事者が患者や利用者のデータを活用したりすることが可能となる。それによって国民の健康寿命の延伸、医療や介護の質の向上、あるいは医師や看護師などの仕事の軽減といったさまざまな課題などに取り組むことにつながるのではないか」と述べた。

 国にはこれまでNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)、介護DB(介護保険総合データベース)、あるいは難病についてのデータが集まっているにもかかわらず「データは分散しており、相互につながっていない。産官学の連携の力を必ずしも引き出せなかったのではないか」という問題意識があったようだ。

 しかし、今後はこれらのデータを連結することで、行政機関が計画を策定する際の根拠としたり、医療分野の研究やイノベーションに生かしたりと、さまざまな利活用の可能性やメリットを想定している。

 一連のデータヘルス改革を進めている組織についても紹介。厚生労働大臣を責任者に置くデータヘルス改革推進本部がその中心となっている。

 具体的な改革の進め方として、2017年7月にデータヘルス改革の初めての推進計画として八つのサービスを発表。今年9月9日、2020年度から2025年度までの四つの項目に再編した工程表を新たに策定した。

 今後のデータヘルス改革の進め方について笹子氏は「国民、患者、そして医療者目線に立って取り組みを進めている。あわせて個人情報保護や費用対効果についても重視する」と説明した。

 施策は大きく4グループに分けられる。まず「ゲノム医療やAI(人工知能)活用の推進」。研究領域を全ゲノム情報に広げる。「がんや難病などの病態解明、診断や治療につながる」と考えている。厚労省はがんゲノム情報管理センター(C―CAT)を設置し情報が集まる仕組みを作った。

 笹子氏によると「米英が先行しているのが実情。例えば英国ではこれまで10万人の全ゲノム情報を収集。新たに100万人の全ゲノム検査を計画している」という。

 二つ目は「PHR(パーソナルヘルスレコード)の活用」だ。個人が自身の保健医療情報を確認する仕組みで、国民一人ひとりが従来は閲覧できなかった健診・検診、予防接種などの医療情報を自分のスマホなどで閲覧できるようにする。

 三つ目は医療・介護現場で患者や利用者の過去のデータを確認できるようにしようというもの。これによって、より質の高い適切な医療や介護の提供が可能になるという。ただ、全国の医療機関で保健医療情報の閲覧や活用をするためには「電子カルテなどデータ管理の標準化の推進が必要」だ。データの規格が統一されていないため、実施までの課題は少なくない。

 四つ目がデータベースの効果的な利活用だ。「ビッグデータを利活用することができれば企業や研究者らがその研究に生かすことも可能だ」という。

 しかしながら、個人情報の医療等分野での活用の前提として、被保険者番号の個人単位化などを行い、その履歴を活用したデータベースの連結を進める方向とのことだ。

 進行する新たな動きも紹介された。特定健診や乳幼児健診はPHRという側面があるものの「乳幼児健診の情報はこれまで、引っ越しをして市区町村を変わると情報が引き継げないのが実情」だった。

笹子 宗一郎 氏

 しかし今年5月の通常国会で行政手続きを電子申請に統一する「デジタルファースト法」が成立。これに伴い乳幼児健診情報を引き継げるように法改正が実施された。「乳幼児健診や特定健診など、一人ひとりが個人のスマホなどで情報を見られる時代はまもなく来る」という。「しかし、ゲノム情報の収集などによって国民が不利益を被ることのない社会でなければならない」と笹子氏は強調した。


●理事長講演
「ICD―11、早期の普及」
(日本診療情報管理学会理事長)

 日本診療情報管理学会の末永裕之氏は、2019年5月22日に世界保健総会(WHA)で承認されたICD―11(国際疾病分類第11版)の国内での普及や推進の概要について話した。

 ICDとは疾病や死因について国際的に統一した基準で分類したもので、正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」だ。疾病やけが、死因などがアルファベットと数字を組み合わせた「コード」で表されており、そのコードは国内の公的な統計や国際的な統計にも使用されている。また医療施設の診療録や医療費の支払いなどにもICDのコードが使用されている。

 現在使われているICD―10は1990年に定められたもの。大幅な改訂は約30年ぶりの実施となる。導入までには2021年度から5年間の猶予期限があるものの、運用へ向け、世界各国の動きが加速しそうだ。

 ICD―11の特徴について、末永氏は「世界各国の専門家によって最新の知見が取り入れられたこと。紙ベースではなく、初めてインターネットを基本にWebサイトから分類が提供されること」などを挙げた。

 日本診療情報管理学会はICD―11について、2018年度から3年計画で厚労科学研究費の支援でICD―11に対する研究に取り組んでいる。同学会が養成している専門職・診療情報管理士によって導入の影響などを調査するフィールドテストを実施した。

 その結果「現状では、ICD―11への移行は、たとえベテラン実務者であってもすぐに取り組むのは難しく習熟が必要となる。紙ベースでのマニュアルが必要ではないか」(末永氏)といった課題などが明らかになったようだ。また「日本の疾病とのこまやかな整合も必要」のようだ。

末永 裕之 氏

 加えてWHO(世界保健機関)は新たにICHI(医療行為分類)の完成も目指しており、今後新たな国際分類が加わることを業界として視野に入れる必要もあるようだ。末永氏は「ICD―11やICHIの導入に当たっては、診療情報管理士をはじめ事務部門など実務者への期待は大きい。学会としても医療の質向上に貢献できるよう診療情報管理士の研修の実施など人材の教育やICD―11に関する迅速な情報提供に努めたい」と結んだ。

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