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第45回日本整形外科スポーツ医学会学術集会 原点からの飛躍と多様性への対応

第45回日本整形外科スポーツ医学会学術集会 原点からの飛躍と多様性への対応

 「原点からの飛躍と多様性への対応」をテーマに掲げた「第45回 日本整形外科スポーツ医学会学術集会」(会長・中村博亮大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学教授)が、8月30日、31日、ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター(大阪市)で開かれた。スポーツ整形外科学に関わる医師や看護師、理学療法士など約1700人が参加した。今回は、高齢者とスポーツに関わる基調講演を取り上げる。

●基調講演:
超高齢社会におけるスポーツ医学の役割

武藤 芳照(東京大学名誉教授/東京健康リハビリテーション総合研究所所長)

 整形外科医としての経験の後に東京大学教育学部で教育に携わった武藤芳照氏。東京大学では理事、副学長などを務めた。

 自身も学生時代に水泳部に所属していたことなどからスポーツ医学への道を志す。ロサンゼルスをはじめ3度の五輪の水泳日本代表のチームドクターのほか国際水泳連盟の活動にも関わるなど社会活動にも寄与する。

 講演では、日本が最長寿国の一つであることを踏まえた上で、高齢者の寝たきりや要介護の原因が骨折や転倒であることを報告。2016年の国民生活基礎調査によると全体で第4位、男性では第4位、女性では第2位になるとした。

 さらに、高齢勤労者の増加によって60歳以上の労働災害が増加している点を指摘。その数は「20代の2倍以上で特に転倒や転落事故が増えている」という。そこには「自分でできると予測していることと実際の身体のギャップがある」と分析する。

 そこで武藤氏は「一人ひとりの高齢者が健やかで、実りある日々を、生きがいを持って過ごすためにはスポーツ医学が社会的使命を果たすことが重要」とする。

 武藤氏はすでに具体的な活動を始めている。その柱の一つとなるのが高齢者の転倒予防に対する活動だ。2014年に日本転倒予防学会を設立。原点は1997年に勤務先の病院で始めた「転倒予防教室」だった。「転倒を予防すれば高齢者の骨折、寝たきり、要介護の予防に結び付けられる」と健診、運動や生活指導をプログラムに盛り込んだ。

 学会では10月10日を「転倒予防の日」に制定して、その広報活動を通じて予防の大切さを伝える。学会認定の「転倒予防指導士」の育成にも取り組み、すでに約900人が活動する。今年10月5日、6日には新潟市で第6回の学術集会も実施。労働災害における転倒予防などをテーマにシンポジウムを企画する。

 若年世代へのアプローチも重要だとし、スポーツの楽しさや喜びを正しく理解することで「高齢になってもスポーツや運動を続けてほしい」と訴える。

 「うさぎ跳びが有効」「運動中に水は飲むな」などといった「間違ったスポーツやトレーニングの常識を正していく必要がある」という。
 また、水泳のスタートによる頸椎損傷など、重大なスポーツ事故に対して法曹界などと連携しながらガイドラインを作り予防策の構築にも力を入れる。

武藤 芳照氏

 最近では、スポーツ界で相次ぐ体罰、暴力といった誤った指導に対する予防を考えようとスポーツ・コンプライアンス教育にも尽力する。

 「スポーツ医学を通して縁が生まれ、運が開かれた。スポーツや運動の社会的な役割は重要だ」と武藤氏。「その価値を高めていくことが超高齢社会の人々の幸福につながるのかもしれない」と語った。

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