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第34回日本環境感染学会総会・学術集会 ―皆でAMR(やくざいたいせい)時代に臨むー

第34回日本環境感染学会総会・学術集会 ―皆でAMR(やくざいたいせい)時代に臨むー

2019年2月22日、23日の2日間、兵庫医科大学感染制御学の竹末芳生主任教授が会長を務めた「第34回日本環境感染学会総会・学術集会」(会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場・神戸ポートピアホテル)が開かれた。医師や看護師、薬剤師ら、およそ7500人が参加した。

パネルディスカッション「AMRのアクションプラン」

抗菌薬が効かない「」()を持つ細菌が世界各国で増加。対策をとらなければ、AMRに起因する死亡者数が2050年には世界で1000万人に上るとの見方もある。日本は2016年4月、WHOが掲げる国際行動計画を踏まえた6項目からなる「(AMR)対策アクションプラン」を策定。2020年までの達成を目指している。この日、4人のパネリストがそれぞれの立場から活動を報告した。

「外来診療でAMR対策をどう実践するか?」
中山 久仁子(医療法人メファ仁愛会 マイファミリークリニック蒲郡 理事長・院長)


 専門は感染症・家庭医療。国内で勤務医、海外での国際貢献活動などを経て開業した。主に内科、小児科領域のコモンディジーズの診療に当たる。「抗菌薬の処方は外来が95%。いかに減らすことができるかが重要だ」と中山久仁子氏は言う。

 大部分が風邪による処方だ。「予後が心配だから抗菌薬を処方したい。そんな医師が少なくないが、抗菌薬は下痢症状などの副作用が現れることもある。予防薬としては効率的ではない」と指摘する。「疾患がウイルス性感染であるかどうか、丁寧に診断することが大切だ」。抗菌薬を強く望む患者の対応も課題だ。処方しなければ納得しないケースがあるからだ。

 中山氏は「大切なのは患者さんのことをよく理解すること」と言う。「抗菌薬が必要だと考えるのは、早く治りたいという気持ちの表れ。身体的な症状と感情面の両方を捉えることが必要だ」と強調した。 そのために氏が実践していることがある。カナダの大学教授であるモイラ・スチュワート氏が著書「患者中心の医療」で提唱した「か・き・か・え」の視点で情報を収集することだ。

 そのために氏が実践していることがある。カナダの大学教授であるモイラ・スチュワート氏が著書「患者中心の医療」で提唱した「か・き・か・え」の視点で情報を収集することだ。

 「か」は「解釈」。患者が自身の病気をどう捉えているのかについて理解すること。「き」は患者が「期待」していることを探り出すことだ。

 次の「か」は今、患者がどんな「感情」を持っているのか。そして「え」は病気によってどんな「影響」を心配しているのか。

 これらを丁寧なアプローチで拾い上げ、患者の不安の解消にもつなげる。否定的な表現を避け、ポジティブな言葉を使うこともポイントだという。

 適切な抗菌薬の使用には患者の協力が欠かせない。マイファミリークリニック蒲郡でも、抗菌薬に関する啓発活動の一環で「患者3カ条」を掲示。「医師の指示どおりに飲みきる」といったメッセージを発信している。

 患者に向けてアンケートを実施したところ、「抗菌薬に対する理解が、着実に深まっているという手応えが得られた」と振り返る。

 地域の保育園や小学校、介護施設。適切でない抗菌薬の使用について知ってもらおうと、さまざまな場所を訪れている。

 患者をよく知り、フォローする。地域全体で知識を高め、情報を共有する。「それがスムーズな診療の後押しになる」と結んだ。

「市民と医療者の教育啓発」
(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)

 AMR臨床リファレンスセンターは、厚労省委託事業としてAMR対策の推進を目的に設立。「より多くの情報に触れてもらうことで抗菌薬使用の抑制を目指している」と具氏。

 同センターによる調査で分かったのは「市民には抗生物質や抗菌薬に対する誤った理解が広がっている」。いわば正しい情報に「書き換える」のがセンターの役割の一つだ。

 AMR啓発月間の11月にはプレスリリースの配信などを活発化する。メディアへのアプローチを強化した結果、ウェブサイトの月間プレビュー数は20万にも達する。

 「医療従事者がアンバサダーとなってAMRの情報を伝えてほしい。専門家が果たす役割は大きい」と会場に呼びかけた。

「基幹病院の感染症医として高齢者施設を支える」
(沖縄県立中部病院 感染症内科・地域ケア科)

 髙山氏は地域の基幹病院として、高齢者施設における「抗菌薬の適正使用支援」を実施している事例を紹介。昨年、髙山氏は適正使用に向けた教育介入、相談体制の構築などを開始。10施設が活動に参加した。

 各施設の抗菌薬の使用状況をヒアリング。AMR対策の観点から抗菌薬の変更や使用量の適正化などを提案した。

 また「抗菌薬早見表」やフローチャートも作成。急性期病院への搬送のタイミングなど「現場が使いやすい」点に注力したことも特徴だ。

 高齢者施設の責任者の平均年齢は高まっており、70代も珍しくない。髙山氏は「共にシステムをつくる必要があると考えた。今後は在宅などでの展開も検討したい」と語った。

「AMR対策のためのサーベイランス」
(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)

 国立国際医療研究センターが開発した感染対策連携共通プラットフォーム「J│SIPHE(ジェイサイフ)」。医療施設が共通の評価指標を用いてAMR対策に取り組むことができるサポートシステムだ。

 2019年1月に一部の運用を開始し、4月に本格稼働。J│SIPHE登録施設の感染症診療や感染対策の状況、さらに耐性菌の検出や抗菌薬の使用状況といった情報を入力する。施設内での経年変化や他施設との比較なども可能。成果や課題を可視化できる。

 早川氏によると、今後も現場の負担の軽減も見据えて「入力作業の自動化、簡便化を目指す」。より高度で使いやすいシステムの構築に向けて、データの蓄積が進む。

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