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第28回日本がん転移学会学術集会・総会 見える転移、見えない転移との闘い

第28回日本がん転移学会学術集会・総会 見える転移、見えない転移との闘い

 7月25日(木)・26日(金)の2日間、城山ホテル鹿児島(鹿児島市)で「第28回日本がん転移学会学術集会・総会」が開かれる。がんの再発や転移を完全に防ぐ方法は、まだ確立されていない。果たして「転移との闘い」に勝利するために、医療はどのような方向へ進むのか─。会長を務める鹿児島大学・夏越祥次教授のメッセージをお伝えする。

研究成果を未来につなげる

 ここ鹿児島で「日本がん転移学会学術集会・総会」が開催されるのは、2008年の第17回以来のことです。

 このとき会長を務められたのは、当鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科学の前教授である愛甲孝先生(在任期間:1994年~2007年)。私は事務局の一員として運営に携わり、演題の募集やプログラムの作成などを担当しました。それから約10年が経ち、がんの診断や治療の技術は大きく進歩しました。今回、会長として開催させていただくことをうれしく思います。

 本学会の特徴は臨床医から基礎研究に力を入れている先生方まで、横断的であることでしょう。外科系、内科系の医師をはじめ、免疫学、病理学、生化学、腫瘍学など幅広い領域の研究者が集まります。臨床的な視点と基礎的な視点。その両面からさまざまな研究成果が発表されますので、活発な意見を交換できる場となることを期待しています。私たちが向き合っている「がんの転移」について、これまでとは異なる新たな角度から、捉え直すことができるのではないかと思っています。

 「転移を制するものはがんを制する」と言われています。がん細胞が転移するメカニズムを解き明かし、その確率を低下させることが、死亡率の低下に大きく貢献すると考えられるからです。そのために、私たちがん医療に関わる者には、今、そしてこれからどのようなことができるのか。持ち寄った研究成果を、新たな薬剤の開発や医療機器の進化などにつなげていくことも含めて「実質的な議論」ができる空間とすることで、治療成績の向上に貢献したいと考えています。

どこまでがんを追いつめることができるか

 今回、「見える転移、見えない転移との闘い」というテーマを掲げました。まず「見える転移」に関して重要なのは、CTやMRI、PETなどの画像診断機器を駆使して、いかに転移を正確に把握するかという点です。診断結果に基づき、手術療法、化学療法、放射線療法、そして分子標的療法、免疫療法などを用いて、転移を制御します。

 近年では切除不能な進行がん、遠隔転移などの症例に対して、転移巣の切除によって予後の生存率が向上するとの報告もあります。また、その治療効果について、画像診断や遺伝子・分子生物学的診断によって、どのようにしっかりと評価するかということも大切です。

 そして、「見えない転移」に関しては、明らかになっていないことが多いのが現状です。「転移していない」と診断されたが、本当に他の臓器に存在しないのだろうか。実は存在しているが、その姿が見えていないだけではないか─。

 がん細胞を切除することで、完治に至った。そう思っていても、リンパ節などを細かく調べていくと、小さな転移が発見されることがあります。がん細胞は血液やリンパの流れに乗って移動します。がん細胞を誘導し、活性化させる物質があることなども分かっています。

 診断から5年が経っても転移が見られないことが、がんを克服したという一つの基準とされています。しかし、実際には10年を超えて再発する症例も少なくありません。長い間おとなしくしていたがん細胞が、何らかのきっかけによってスイッチが入り、活動を再開させてしまうのです。

 なぜ、がん細胞が活発化したり、逆に活動しなくなったりするのか、そのメカニズムは解明されていません。血中、骨髄、臓器、リンパ節などに潜む転移について、現在、どのような段階まで明らかになっているのか。参加される先生方に、多様なアプローチによる研究成果を発表していただきます。

診断から治療まで最新のトピックを発信

 見どころの一つは、テーマである「見える転移」「見えない転移」に関するシンポジウムです。「見えない転移の新たな診断法」「見えない転移に対する治療」「見える転移の診断・治療の工夫と評価」の三つのカテゴリに分かれています。

 シンポジウムの演題として「Liquid biopsyを⽤いて⾒えない“がん”の存在を知る」「周術期におけるneutrophil extracellular traps(NETs)の形成と癌細胞のトラップ」「⾎中循環腫瘍細胞におけるHER2発現を標的とした切除不能進⾏・再発胃癌に対する新たな治療戦略」などを予定しています。

 私が登壇する会長講演「見える転移、見えない転移との闘い」では、鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科学が進めている研究の成果を発表します。また、特別講演として、転移性の食道がんをテーマにしたお話を米コロンビア大学の中川裕先生に、陽子線治療に関する教育講演をメディポリス国際陽子線治療センター(鹿児島県指宿市)の荻野尚センター長にお願いしました。

 夏の暑さを忘れてしまうほど「熱い」学会にしたいですね。がん医療に携わる、多くの方々の参加をお待ちしています。

学術集会・総会の主なプログラム主なプログラム

●3D modeling of metastatic esophageal cancers and personalized medicine
(特別講演)
7月25日(木)午前11時~正午 中川 裕氏[米コロンビア大学]
●悪性腫瘍に対する陽子線治療(教育講演)
7月25日(木)午後1時40分~同2時40分
荻野 尚氏[メディポリス国際陽子線治療センター]
●腫瘍血管内皮細胞による Biglycanの分泌を介したがんの転移促進
(研究奨励賞講演)
7月26日(金)午前11時5分~同11時30分
間石 奈湖氏[北海道大学大学院 歯学研究院・血管生物分子病理学]

●シンポジウム
7月25日(木)午前8時30分~同10時50分
◎シンポジウム1 見えない転移の新たな診断法
7月25日(木)午後2時40分~同4時20分
◎シンポジウム2 見えない転移に対する治療
7月26日(金)午前8時30分~同10時10分
◎シンポジウム3 見える転移の診断・治療の工夫と評価


会期:7月25日(木)~26日(金)
会場:城山ホテル鹿児島
運営事務局:株式会社コングレ九州支社
☎092-716-7116
学会HP:http://www.congre.co.jp/jamr2019/

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科消化器・乳腺甲状腺外科学教授
会長 夏越 祥次 氏(なつごえ・しょうじ)

1981年広島大学医学部卒業。鹿児島大学医学部第1外科(現:消化器・乳腺甲状腺外科学)、独ミュンヘン工科大学留学などを経て、2009年から現職。鹿児島大学副学長、鹿児島大学病院長を兼務。

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