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第25回日本災害医学会総会・学術集会 これでいいのか、災害医療!

第25回日本災害医学会総会・学術集会 これでいいのか、災害医療!

 2月20日から同22日までの3日間にわたり「第25回日本災害医学会総会・学術集会」(会長・兵庫県災害医療センター中山伸一センター長)が神戸国際会議場・神戸商工会議所・アリストンホテル神戸で開かれた。医師、看護師ら約2400人が集まった。


●会長講演
「阪神・淡路大震災から25年 災害列島で暮らす医療人へのメッセージ」
中山 伸一 氏(兵庫県災害医療センター長 兼 神戸赤十字病院副院長)

 1995年の阪神・淡路大震災から今年25年を迎えた。自然災害は増加傾向、日本は災害を避けられない国だと改めて感じる。

 震災が起こる前、神戸は災害もほとんどなく安全だと思っていたが、そうではなかった。

 震災後に判明した数字は負傷者約4万人。多数の日本家屋の倒壊を目の当たりにした。上半身をはさまれた方はほとんど即死。下半身をはさまれた方の多くは筋肉組織が破壊されることによって発症するクラッシュ症候群だった。

 当時、私は神戸大学医学部附属病院に勤務。病院も倒壊は免れたが、惨憺たる状況だった。外来では内科、外科関係なく入院患者を受け入れた。間もなく透析患者さんの対応が急務だと判明した。大阪市大から受け入れ可との連絡があり、陸送や、ヘリ、船での搬送をした。今でいう広域医療搬送の始まりだったと思う。

 災害時は需要が増え、供給が足りなくなる。ライフラインは遮断され、高度先進医療機関も機能が低下する。病院によっては医師1人当たり数百人の患者に対応していた。市内の病院へのアンケートで3カ月後に判明したが、そのときは情報が途絶し、各医療施設の状況は不明だった。

 震災後に災害医療分野は大きく変わった。現在、国内には742の災害拠点病院が設けられ、EMIS(広域災害・救急医療情報システム)が構築、災害医療コーディネーターも生まれた。国内約1700のDMAT(災害派遣医療チーム)が誕生し、活躍しているのも進歩だ。その半数が兵庫県災害医療センターで研修を受けた。

 ただ、東日本大震災、熊本地震を経てわかったのは、このシステムも完璧ではないということだ。例えば、熊本地震ではEMISをみると、自病院で情報を発信できたのは2割。情報発信の重要性を訓練のたびに伝えているが、実行が難しいようだ。別の方法を考えなければいけないだろう。

 今後の課題には、災害拠点病院のライフラインやハードウエアの充実がある。日常業務で忙しいとは思うが普段から危機管理意識を高めることも必要だろう。

中山 伸一 氏

 また、新型肺炎の対応でもDMATが活動することになったが、〝竹槍精神〟で突っ込んではいないだろうか。不確実なロジスティックスで動き、隊員に負荷はかかっていないか。災害医療はDMATだけでは不十分なのに「まずはDMAT出動」という考えが、厚労省も含め国のトップにありはしないだろうか。

 医療者同士も、自身の専門外への関心を持って連携することも課題だろう。命のためには頑張ろうという医療者だからこそ、災害医療活動を検証しながら、前に進みたい。


●パネルディスカッション 「これでいいのか、原子力災害医療!」

 現在、国内には33基の商業用原子力発電所があり、東日本大震災後の新規制基準に合格して再稼働している発電所は9基。原子力災害医療に対しては2015年8月、原子力規制委員会が原子力対策災害指針を改正。国指定の高度被ばく医療支援センター、原子力災害医療・総合支援センター、原子力発電所や研究所が立地する自治体などが指定する原子力災害拠点病院、また同自治体が登録する原子力災害医療協力機関が設けられた。パネルディスカッションではパネリスト7人が講演。その中から3人の要旨を紹介する。

「原子力災害時の保健医療支援の〝 空白 〟 をどのように埋めるか」
氏(

 当院は原子力災害拠点病院であり赤十字病院。東日本大震災の時も翌日から救護班が活動した。ただ、原発が爆発したという時点で大混乱し、3月13日に撤退。その後、日赤として原子力災害が起きた時でも各病院の業務継続ができるように計画。救護活動の実施区域の明確化、マニュアルの整備、許容被ばく線量の設定、原子力災害アドバイザー制度を創設。救護班には診療放射線技師を加えた。

 現在、原子力災害拠点病院は48病院。原発のある地域は地方で、高齢者が多く、孤立化が懸念される。被災地域の保健医療面での人的資源の不足が起き、地域の行政機関、医療施設、介護施設への負担が重くなる。

 支援組織を派遣する管理者にとっては、部下たちを安心して派遣できる環境かということがポイント。すべての団体が共通して使えるような、活動基準や安全管理の方法が整備されることが急務ではないだろうか。

「原子力災害拠点病院の現状と問題点:30 名の重症患者広域搬送に備えるために」
氏(

 京都府には原子力発電所は立地していないため、福井県の隣接県の原子力災害拠点病院としての取り組みを紹介する。2016年に拠点病院に指定され、福井の先生方に相談したところ「原発事故が起これば、地域のクリティカルケア(重症患者への医療)は、ほとんど機能しなくなることもあり得る。そこをバックアップしてほしい」と話してくれた。

 当院の救命救急センターは独立した建物で、救命救急病床が30床。福井県内の重症患者を当院で受けることを想定している。

 患者が運ばれてきた際には、同時並行的に除染が必要となる。敷地の広さを利用し、病院後方に除染センター用の建物を建設。センターで除染後、救急車に乗り換えて、救命救急センターに搬送する動線だ。

 課題は人材育成。隣接県としての役割を訴えながら、職員のモチベーションを上げていきたい。

「オールJAPANの放射線災害医療にしませんか」
氏(

 日本の原子力災害への備えは原子力災害拠点病院が中心だ。拠点病院が擁している原子力災害医療派遣チームが大きな役割を担うが、その数は十分とは言えない。DMATが補うのであれば原子力災害に対する研修が必要。福島の事故の際も派遣されたものの、情報も知識もなく活動ができない事態も起きた。監督官庁の原子力規制庁と厚労省の連携も課題ではないだろうか。

 米国ではCDC(疾病予防管理センター)も感染症だけでなく各種の自然災害、原子力災害という問題が最近のテーマ。横断的に防災を捉える防災省設置の動きもあるが具体的ではない。

 原発だけではなく放射線治療装置など放射線はすべての都道府県にあり、それらの事故などに対しての備えも必要だ。

 日本はこの分野の若手の人材確保が十分ではない。原発立地県などを中心に地道な啓発教育活動を続けていく必要があるだろう。

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