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第10回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会-これまでの10年 これからの100年-

第10回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会-これまでの10年 これからの100年-

 2019年5月17日から19日、医療法人社団弓削メディカルクリニック院長の雨森正記氏が大会長を務めた「第10回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会」(会場:国立京都国際会館)が開かれた。プライマリ・ケアに関わる医師や歯科医師など、約4700人が参加した。

●シンポジウム
小児期発症の慢性疾患を持つ患者への成人移行支援(トランジション)における
プライマリ・ケア医の役割

 小児期に発症した疾患の治療を継続しながら成長し、年齢と共に成人期の医療の必要度が増していく。そんな患者を対象とする小児期と成人期の医療をつなぐ概念「トランジション(移行)」が注目されるようになった。シンポジウムではプライマリ・ケア医たちによる、連携体制の現状や未来が語られた。

慢性疾患を持つ小児患者がスムーズに成人期診療に移行するには
総合診療医、プライマリ・ケア医の役割」
                  (医療法人いちのせファミリークリニック 副院長)

 「小児人口が減少する中、小児慢性特定疾病の患者において成人を迎える人数は毎年1000人以上と予想される」。総合診療医としてクリニックと病院で勤務する一ノ瀬英史氏にも「トランジションの問題に直面する患者と接する機会が増えている」との実感があるという。

 小児期医療から成人期医療へと移行するタイミングは「何歳から何歳まで」と区切れるものではない。疾患の性質や重症度、地域性などによって患者ごとに適切な時期があり、個々にふさわしい医療システムが提供されることが望ましい。

 しかし、円滑な移行をサポートする体制については整備が十分でないのが現状だ。患者や家族側が不安を感じるなど、「気持ちの準備」が整っていないために成人期医療に移行できないこともある。こうした全人的医療を重視する小児期医療と、臓器別に細分化された成人期医療の違いを一ノ瀬氏は指摘する。

 「臓器を横断した診療が必要な場合や、疾患以外の社会的、あるいは家族間の問題を抱えているケースなどは、カウンターパートを見つけるのが難しい」

 カギを握るのは小児科と成人科の連携だけではない。診療科間や医療機関同士の関係構築や連携のハブになり得る総合診療医などの存在も不可欠だと一ノ瀬氏は強調する。「重度の知的障害の患者さんを成人科で診療する際、単科での対応は難しいのではないかと判断したことがあった。神経内科など、複数の診療科が関わることで移行することができた。併存疾患がある場合、2カ所の医療機関の医師が関わることもある」。併診する形の中心を総合診療医らが担うのが目指すべきあり方のようだ。

 今後を見すえて一ノ瀬氏は「総合診療医の育成において、成人移行支援に接する機会を増やすことが必要だろう」と語った。

最善の医療としての成人移行期支援(トランジション)」
                   総合診療部 統括部長)

「小児期発症の慢性疾患の場合、40代になってもその患者を小児科医が診ているケースも少なくない」。そう指摘するのは窪田満氏だ。高血圧、がんなど、年齢を重ねるにつれて成人期特有の疾患の割合が大きくなっていく。「小児科医が成人を診ることは難しいと認識すべきだろう」。

 国立成育医療研究センターのトランジション外来が重視しているのは、患者が自身の疾患を理解し、自ら行動できるよう支援すること。成人科を受診したが患者自身が何も説明できず、成人科医師が困ったー。そうしたケースが問題視されているからだ。

 そこで同センターでは「成育サポートプログラム」の一環として「知ろう大作戦」と名付けたプロジェクトを展開している。自分の疾患のことをしっかりと知り、必要な情報を入手し、活用する「ヘルスリテラシー」。その力を高めることが、移行期医療のスムーズな推進には必要だ。

 トランジション外来の開設から約3年半の間に、350人ほどを診療した。最も多いのは15歳から19歳で、40歳以上もいる。小児期医療から成人期医療へこのプログラムを経て完全に移行することができたのは、そのうち22%だという。

 小児医療を専門とする立場から、窪田氏はいくつかの疑問を投げかける。例えば、小児科医と患者の関係性は、ときに結びつきが「強くなりすぎる」ことがあると言われる。「ずっと先生の医療を受けたい」と信頼を寄せる患者を、つい長期にわたって受け入れる。「小児科医はそこに依存してしまっていないだろうか」。

 現在、窪田氏が研究代表者を務める厚労科研で、成人移行期支援の体制整備に向けた調査研究が進んでいる。「各都道府県に拠点をつくる構想もある」と窪田氏。

 「最善の医療を探していきましょう」と、メッセージを送った。

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