急速な情報革命によって対人関係のあり方など社会が大きく変化し、子どもたちの「こころの問題」も多様化・複雑化している。子どもたちのSOSを周囲の大人たちがいかにして捉え、支援していくか。研修会「精神保健福祉夏期講座〜子どものこころの危機を支援する」が、7月31日と8月1日の2日間、福岡県春日市で開催された。
◎学校、行政、医療関係者 延べ421人が聴講
講座が始まったのは1968年。毎年「子どものこころの問題」をテーマに、福岡県内外の精神科医や臨床心理士などを講師に迎えて開催されている。
初日は西南学院大学大学院の小林隆児教授が「赤ちゃんから学ぶ子どものこころのSOSと安全基地」、大阪大学大学院の藤岡淳子教授が「少年非行の理解と治療教育~性非行を中心に~」と題して講演。
2日目の内容は神奈川県立精神医療センターの小林桜児医療局長による「若者の生きづらさとアディクション~信頼障害からみた依存症・自傷行為・摂食障害~」、広島国際大学大学院の向笠章子教授による「学校コミュニティへの緊急支援~緊急事態に直面したこころのケアのために~」だった。
今回も学校や行政、医療関係者など、延べ421人が参加。所属別でみると小・中・高の学校関係が約4割と最多。県・市町、病院、他の学校、福祉・施設、保健所、保育所・幼稚園、児童相談所と続いた。職種では養護教諭、心理・福祉、教諭、相談員、保健師、保育士、看護師、医師の順となった。
◎受講後のアンケートから(一部抜粋、要約)
◆アディクションについて理解が深まった。背景をよく理解し、依存している薬物などを使わなくても対処できるよう一緒に考えていく必要があると分かった。(保健師)
◆緊急支援の話は災害、児童や生徒間の事件など実際にあり得る。支援が大切と感じた。
(小学校養護教諭)
◆子どもの相談を受けることが多くなり、どのように支援すべきか、背景にあるものは何か、考察する機会になった。現場で今回の講義内容を生かしていきたい。(医療機関職員)
◆現場の支援とはこうあるべきだと、改めて気づかされる貴重な時間だった。日々流されている臨床のあり方を大いに反省した。(児童相談担当)
◆どの講演も視点が新鮮で、実践的だった。多角的・多面的なアプローチの仕方は、必ず役立つと思った。(小学校教諭)
◆子どもの命を守ること。SOSのサインに気づくこと。一人一人に寄り添って支えていくこと。子どもの背景にあるものから問題行動の解決策を考えていくことで、より良い人生につながっていけばと思った。とても理解しやすい内容の講演だった。(専門学校教諭)
[情報提供]福岡県精神保健福祉協会
【講師紹介】
西南学院大学大学院 人間科学研究科
小林 隆児 教授
児童精神科医、医学博士、臨床心理士。日本乳幼児医学・心理学会理事長。
大阪大学大学院 人間科学研究科
藤岡 淳子 教授
博士(人間科学)、臨床心理士。宇都宮少年鑑別所首席専門官、多摩少年院教育調査官などを歴任。
神奈川県立精神医療センター
小林 桜児 医療局長
精神科医。横浜市立大学医学部精神医学教室非常勤講師。
広島国際大学大学院 心理科学研究科
向笠 章子 教授
臨床心理士、スクールカウンセラー。福岡県教育委員会教育相談スーパーバイザーなど歴任。