夛田 浩 教授(ただ・ひろし)
1985年浜松医科大学医学部卒業。
群馬県立心臓血管センター、米ミシガン大学臨床不整脈部門、
筑波大学大学院医学医療系 循環器内科准教授などを経て、2012年から現職。
福井県唯一の医学部として最先端の治療やあらゆる疾患の対応に努めている福井大学医学部循環器内科学。「関連病院に配属された際に頼りにしてもらえる循環器内科医を育てたい」と語る夛田浩教授に、循環器内科医の魅力、福井県をとりまく課題などを聞いた。
─講座の特徴を教えてください。
県内のどのような患者さんに対しても最適かつ、最先端の治療が提供できるよう努めています。
対象となる疾患は、狭心症や心筋梗塞、不整脈などの心疾患、大動脈瘤(りゅう)などの大動脈の病気などさまざま。治療では、経皮的冠動脈形成術(PCI)、末梢動脈形成術、不整脈に対するカテーテル・アブレーション、徐脈性不整脈に対するペースメーカー植え込み術、植え込み型除細動器(ICD)などを積極的に取り入れています。2020年8月には重症の大動脈弁狭窄(きょうさく)症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の施設認定を受けるなど、あらゆる疾患に対応する努力を続けてきました。
福井県は面積こそ広いものの、人口は約76万人しかいません。つまり患者さんが、県内のあちこちに広がっているような状況です。その中にあって大学病院は先進医療を担う役割があると同時に、それらに対応できる医師を育てる必要があります。医局員は、若いうちにあらゆる疾患を経験し、7〜8年ほどしてから臨床研究に進んでいます。
関連病院に配属された際に「この先生だったら大丈夫」と思ってもらえるよう、知識と技術を身につけた循環器内科医の育成を目指して、指導を行っています。
―循環器内科医の魅力はどこにあるのでしょう。
循環器内科医は、心不全、心筋梗塞、肺塞栓症など急性期の初期対応が重要な疾患も担当します。時間外に呼ばれることも多く、敬遠されがちな分野です。医局には現在、女性医師が3人いますが、出産や子育てに対応できるよう、フレックスタイムを含め勤務体制を整えることは当然だと思っています。
循環器内科の魅力は、治療が適切であれば、患者さんが元気になって退院すること。治療による回復が早く、「十分な治療ができた」という実感が強いと感じています。
診断では、採血、画像検査、心電図、エコーなどを駆使し、どこに病気が潜んでいるのか「宝探し」のように探究心を持って取り組むことができ、治療では外科的なことも経験できます。
心筋梗塞、高血圧、高コレステロール、糖尿病にも関わるため、薬の知識も広がり、救急にも対応できるので、循環器内科医はどこの病院でも重宝されている印象があります。
非常に多くの症例を取り扱うため、開業医になっても、どのような疾患にも対応できる力が身につくのではないでしょうか。
―課題は。
福井県のみならず国内は超高齢化のため心不全患者が増えており、循環器内科医の数が不足しています。いずれ医療のあらゆる分野にAI(人工知能)が取り入れられると思いますが、循環器疾患は一人ひとり薬も違うため、最後まで人間の力が必要な分野の一つではないかと感じています。
今後の課題は、認知症患者の心疾患をどのように治療していくか。数年前から問題になっていますが、ご家族と治療について話し合い、難しい判断を迫られることもあるでしょう。また、食生活の変化から、30代など若い世代の心筋梗塞も、以前に比べて増えてきています。
福井は名古屋、大阪、京都と大都市に囲まれているため、多くの医学生が卒業すると、福井を離れてしまうという現状があります。福井に残ってくれるよう声を掛け、今後ますます必要となってくる循環器内科医を一人でも多く育てていければと思っています。
福井大学医学部 循環器内科学
福井県永平寺町松岡下合月23―3 ☎︎0776―61―3111(代表)
http://www.fukui-u-cardio.jp/