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研究マインドを持った臨床医を育てる

研究マインドを持った臨床医を育てる

熊本大学大学院 生命科学研究部眼科学講座 井上 俊洋 教授(いのうえ・としひろ)
1997年熊本大学医学部卒業、2006年同大学大学院博士課程修了。
高千穂町国民健康保険病院、米デューク大学リサーチフェロー、
熊本大学助教・講師などを経て、2019年から現職。


 最先端の治療はもちろんのこと、熊本県内における地域医療への貢献、そして未来の眼科医療に向けての人材育成や研究にも力を入れている熊本大学。就任したばかりの井上俊洋教授が目指す、次代を担うべき臨床医のあるべき姿とは。

―熊本大学の特徴および熊本の地域医療の実態は。

 網膜硝子体疾患、緑内障の手術の件数が非常に多く、熊本県内でも最も重症かつ希少な症例が集まってくるのが特徴です。

 例えば先天性の乳児の緑内障の手術は、全身管理も含めて大人とはアプローチが異なりますし、後々のフォローも必要です。症例としては1年に1人いるかいないかですが、ある程度設備が整ってないと対応できないかと思います。

 熊本大学には「健康寿命を延ばす」という大きな目標があり、患者さんのQOLのために眼科が果たす役割は小さくありません。眼科は外科系の中で比較的若い人材に恵まれている印象がありますが、開業が早い傾向があり、勤務医を確保するのが難しいという課題があります。ここの外来も常に混み合っている状況で、県内の関連病院にも眼科の常勤医がいない場所が存在します。

 極端な例だと、天草市牛深地区は距離的に遠いこともあり、週に1回牛深市民病院に医師を派遣するのみ。水俣市はこれまで週3回の派遣でしたが、今年、常勤医を1人配置できました。

 中堅の勤務医がいないことが問題なのですが、行政とも協力しながら対応していければと思います。


―理想とする臨床医像は。

  一人前になれる若い眼科医を育てることが私の使命だと感じています。

 目標としては「研究者としてのマインドを持ちながら、臨床ができる医師」であること。私が育てたい眼科医は、ただ単純に教科書通りに臨床を行うドクターではなく、生理学や解剖学、分子生物学といった知識を持ち、病気のメカニズムまで考え、見たことがない病気でも治療法を切り開ける、想像力を持った眼科医です。

 研究面においても、私たちにとっての意義は、「bench to bedside」つまり実験台で取り組んだことが、実際の患者さんに役立つことにあります。患者さんに還元されなければ、私たち臨床医が研究をやっている意味はありません。

 また、珍しい病気の治療には、論文を読む必要があります。非常に多くのデータベースがあるので、それをきちんと活用するためには研究者としての目がないと、正しい治療を届けるのが難しいことがあります。

 大学病院には希少な難しい疾患が集まりやすいですし、大学にいる間にどうアプローチするのか、どう情報を集めて対処するのか、開業医になるにしても、一生に必要なことをしっかりと学んでほしいと思います。

 また、珍しい症例は論文に残すことも大切です。医師一人が経験できる症例や知識は限られていますが、世界中の医師が経験した知識を残していくことは、医学の進化につながります。


―教授としての今後の取り組みは。

 専門医養成の道筋をソフト、ハードとともに整えたいと思っています。これまでと違うところでは、専門医を取得するにあたって身につけるべき知識や態度、技術についてのレベルチェックがあります。これまで基準があいまいだった部分が明文化されました。指導する側が、共通の認識をもってきちんと対応する必要があると感じています。

 研究面では、新しいことに挑戦したいと思っています。研究費を確保し、研究の具体的な方向性を示したいですね。前教授に続いて男女共同参画にも積極的に取り組んでいくつもりです。医局は男女比が1対1、手術件数が一番多いのは女性の准教授です。女性はライフイベントが仕事に影響することが多いのですが、そこはしっかりと対応していきたいと思います。


熊本大学大学院 生命科学研究部眼科学講座
熊本市中央区本荘1―1―1
☎096―344―2111(代表)
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/ganka/

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