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研究にも力を注ぎ医療の質向上につなげたい

研究にも力を注ぎ医療の質向上につなげたい

腎臓内科学
鶴屋 和彦 教授(つるや・かずひこ)

1990年九州大学医学部卒業。
同大学院病態機能内科学助手、同大学院包括的腎不全治療学教授などを経て、
2018年から現職。

 奈良県立医科大学第1内科が腎臓内科学と循環器内科学の二つの教室に分かれて2年。腎臓内科学教室の初代教授としてかじ取りを託された鶴屋和彦氏が描く、教室の未来は。

―着任後に注力してきたことや、感じる強みは。

 透析患者や慢性腎臓病(CKD)患者を対象にした大規模なコホート研究を始めたいと考え、準備を進めています。

 奈良県には約3600人の透析患者さんがいると推計されています。また、CKD患者さんは成人の8人に1人で、県内に14万人いると推計されます。これらの患者さんの血液検査や尿検査の数値といったデータをできるだけ多く登録し、予後を追うことによってその関連性を検証する「前向き研究」を実施したいと考えています。

 例えば血清中のアルブミンの値が、患者さんの予後にどの程度影響を及ぼすかといったものです。予後をみる指標も死亡率だけでなく心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントの発生率など、数多く設定します。

 CKD患者さんは一般の患者さんと比較すると心血管イベントの発生率が高いことが分かっています。どのような患者さんが心血管イベントを起こしやすいのかといった点も、登録時データと予後をみていくことで分析できます。患者さんのデータに応じて予後の予測ができれば、治療や予防に生かせますし、分析結果によってはCKD医療の新たな知見を生み出す可能性もあると考えています。

 奈良に移って、驚いたことの一つが腎生検の多さで、これは強みと言えるでしょう。腎臓の組織の一部を採取し評価することで、精度の高い診断をして治療に役立てています。

 腎生検のデータベースもあります。当科では年間100件程度の腎生検を実施するので、すでに数千件のデータがあり疾患のコホート研究が可能。当科ならではと言える研究のシーズを持っていると思います。

 また、約6000例の手術症例のデータも蓄積されています。手術によって急性腎障害を起こす症例があります。急性腎障害が何%に起こり、またどういった疾患のある人が起こりやすいのかなどを明らかにする研究にも取り組んでいます。

―今後の展望を。

 透析医療の質を上げられたらと考えています。そこで着任後、まず着手したのが、透析時間の見直しです。

 これまで、導入したばかりの患者さんの透析時間は、退院時点で「3時間」としていることがほとんどでした。しかし、時間経過とともに尿量が減少し、いずれ最低4時間の透析が必要となります。退院後、維持透析施設で4時間の透析を受け始めると、「時間が長くなった」と感じる患者さんが多く、中には時間延長に納得せずに、3時間透析を続ける方も見られました。

 そこで退院時3時間としていた透析時間を見直し、4時間にして退院いただくことにしました。患者さんにとっては退院後の負担感の軽減、紹介先の医療機関にとっては受け入れやすさにつながっているのでは、と期待しています。

 透析導入時の患者さんに対する教育やケアにも、さらに注力したいと考えています。導入時は透析の重要性を理解し、ご自身で体重制限や食事制限などをする「自己管理力」を上げていただくための工夫が必要です。

 私たちが担当してきた患者さんの中には、腹膜透析を選択する方が比較的多くいます。血液透析・腹膜透析・腎移植のそれぞれのメリットとデメリットをきちんと説明・選択してもらうという手順を丁寧に進めてきた結果だと思います。今後も続けていきたいですね。

 当大学附属病院には、多職種で患者さんをサポートする文化が根付き、メディカルスタッフのスキルも高いと感じています。個々の力とチーム力のさらなる向上を図っていきたいと思っています。

奈良県立医科大学 腎臓内科学
奈良県橿原市四条町840
☎0744―22―3051(代表)
http://nephrology.naramed-u.ac.jp/

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