九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

知恵と工夫で窮地を乗り切る治療を

知恵と工夫で窮地を乗り切る治療を

神戸大学大学院医学研究科 
岡田 健次 教授(おかだ・けんじ)
1988年神戸大学医学部卒業、同附属病院第二外科。
姫路循環器病センター、米コロンビア大学病院、豪セント・ビンセント病院、
信州大学医学部外科学教室心臓血管外科教授などを経て、2018年から現職。

 「死のふちに立っていた人が歩いて退院する。その達成感は何ものにも代えられない」と語る岡田健次教授。信州大学で4年間、教授を務めたのち昨秋、母校にカムバック。現状や今後の教室運営について聞いた。

―医局の特長や強みなど。

 疾患は主に虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、重症心不全にカテゴライズされますが、中でも得意なのが大動脈。心臓大血管にまつわるあらゆる疾患に対応します。

 伝統的に、胸部なら大動脈弓部全置換術、胸腹大動脈であれば脊髄の梗塞予防にエネルギーを注いできました。大動脈弓部全置換の成績は安定しており、脳梗塞が起こるケースは待機手術の場合1~2%と、血管が相当傷んでいる人でないと起こらないレベルに達しています。

 次に、弁膜症です。典型的な僧帽弁の場合、自身の弁を温存する手術を行います。重視するのは、遠隔期のQOL。弁形成が難しいとされてきた大動脈弁についても、弁を残す手術を積極的に行っています。内科とのハートチームも強化。5年ほど前から経カテーテル的大動脈弁置換術にも対応しています。

 高齢者に対応する治療の幅は広がっており、僧帽弁に関してもカテーテル的な弁形成術や置換術が出てくる可能性もある。一方でロボット手術による形成術が保険収載になりましたので、今後チームを立ち上げて取り組もうと思っているところです。
 重症心不全に対する植込み型補助人工心臓も手掛けています。これもハートチームあってこそです。

―診療の課題と対策は。

 大動脈疾患で一番大がかりなのが胸腹部の手術。これによる脊髄梗塞は完全に予防しきれないのが現状です。ステントグラフトの治療が難しいし、世界のトップサージョンもなかなか乗り越えられない壁がある。脊髄保護に関する基礎研究を生かして成績改善できれば。

 緊急手術が必要な大動脈解離に関しては、安定した状態ならほぼ救命できる一方、臓器灌流障害を伴う場合は厳しい面がある。これも頭や心臓、腸管や脊髄に梗塞を起こしやすいのです。そこで例えば頭の灌流障害なら首の血管を露出し血液を1秒でも早く流すことで救命します。手術しないという選択もありますが、なんとか工夫しやり遂げることがブレイクスルーにつながると思っています。

 弁膜症では、感染性心膜炎を併発している場合に敗血症や急性心不全が起こりやすいのが難。弁膜に着いた疣腫(ゆうしゅ)という菌の塊が外れて飛ぶと、脳梗塞も起こります。ガイドラインには治療はすぐ行わないのが望ましいとあるが、何もしないのは苦しい。そこで脳梗塞を悪化させない、新たな出血を起こさせないための研究に取り組んでいます。

 忘れられない症例があります。15~16歳の女の子が感染性心膜炎にかかり、脳梗塞で意識のない状態で運ばれてきました。危うい状況でしたが、人工心肺に対する抗凝固薬療法を適用、脳出血を起こさせず、傷んだ弁を形成しました。結果、杖歩行で退院できた。うれしかったですね。

―教育で心がけたいこと、若手へのメッセージは。

 外科は基本、実学です。「大学にいては手術できない」などと言わせないのが私の使命。トレーニングを効率的に行い、しっかり技術を身に付けてもらえるよう工夫したいですね。

 同時に習得してほしいのは、コミュニケーション能力や判断力、リーダーシップ。これは、上に立つ人間が手本になるしかない。私自身、部長が回診する姿から多くを学びました。先輩は後輩のよい手本になる、そんな文化を引き継いでいければと考えています。

 日本の外科の成績はとても優秀ですし、学習環境がこれだけ向上したわけですから、やる気次第で高い到達点を目指せます。柔軟な発想を大切に、「コイツなら頼れる」と信じてもらえる医師を目指してほしいですね。

神戸大学大学院医学研究科 外科学講座 心臓血管外科学分野
神戸市中央区楠町7―5―2
☎078―382―5111(代表)
http://www.med.kobe-u.ac.jp/geka2/cardio/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる