愛媛県立中央病院
菅 政治 院長(かん・まさはる)
1982年徳島大学医学部卒業。
同附属病院、愛媛県立中央病院医監泌尿器科部長、同病院腎糖尿病センター長などを経て、
2020年から現職。
松山市の中心部にある愛媛県立中央病院。高度急性期や周産期、小児などの医療の中核を担う。2020年4月に就任した菅政治院長は、職員の働き方改革を進めつつ、病院の強みを磨くことで、「人口減少時代を生き抜く」と説く。
高度救急医療と手術の機能強化を
松山医療圏は3市3町からなり、人口計約65万人を抱える。都市部の松山市を中心にしつつ、人口減少が著しい山間部も併せ持つ。「2025年には人口が61万人ほどに減る」と、菅院長は説明する。人口減を見据えた地域医療構想では、圏域で必要とされる高度急性期病床は現在の約1000床から約800床にまで減るという。
「病床数が減っても収益を保ち、病院が存続できる体制を築くこと。『高度な救急医療と手術』という看板を生かした診療に磨きをかけます」と菅院長。2014年に建て替えが完了した新病院で担う高度救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センターなどの機能を高める必要性を強調する。
それを進めるための要は「人」だと認識する。院長就任に当たり、早急に取り組みたいことの一つは、スタッフの働き方改革だ。菅院長は「中でも看護師については、強い問題意識を持っています」と話す。
日本医療機能評価機構の全国調査では、自院の看護師の「職員やりがい度」は低めの傾向だという。看護師不足の中、人員確保が必ずしも十分でないことに加え、「重症患者が多く在院日数が短い」という高度急性期病院特有の業務ストレスも影響しているとみる。
同じ調査では、医師のやりがい度は高め。「新しい医療設備・技術の導入に積極的な体制が、やりがいを生んでいる」と捉える。ただ、救急も担う地方の大規模病院。診療科によっては厳しい労務が続く。「院内の改善推進室を中心に多職種を巻き込んで働き方を見直し、スタッフ全体の働きがいと満足度を向上させていきます」
泌尿器科は外科の一つ
愛媛県西条市出身。「人の命を救える仕事」である医療に引かれ、徳島大学医学部に進んだ。手術に強い関心を寄せていた当時、後に学長を務めた香川征先生に「泌尿器科は今や外科の一分野。外科に入るつもりで来なさい」と誘われ、泌尿器科へ入局した。「先輩たちが医局の真ん中で雀卓(じゃんたく)を囲み、ビールを飲みながらわいわいやっている雰囲気に魅せられたのも事実ですが」と笑う。
医師となり、時代は内視鏡手術から腹腔鏡手術、ロボット支援下手術へと目まぐるしく移り変わった。先進テクノロジーに強い関心を持つ菅院長は、心躍らせて技術習得に励んだ。「操作性や画質が格段に進歩し、難易度の高い手術がどんどんやりやすくなった。手術のあり方が変わる驚きの連続で、夢中で勉強しました」
医療は患者のために
2012年。医師としての原点を見つめ直す機会を得た。日本泌尿器科学会の創立100周年記念事業で聞いた講演。「急速に進歩する医療技術だけに心を奪われていないか。医療とは、最終的に自身の『良心』に従って行動するものだ」。大先輩の医師の言葉が心に響いた。「入局時の黒川一男教授から常々聞かされた『患者を思っての医療をしろ』との言葉の真意も、ようやく分かった気がしました」
愛媛県立中央病院には現在、手術支援ロボット「ダビンチ」が2台導入され、がん治療を中心に高度な手術にも挑む。停留精巣や水腎症など小児泌尿器疾患に対応できる病院として存在感を高める。「どんな技術も医師の満足のためでなく、患者のより良い人生のためにある」。菅院長は心にとどめて日々、病院運営に当たる。
愛媛県立中央病院
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