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産婦人科医の育成と 地域との連携を強化

産婦人科医の育成と 地域との連携を強化

香川大学医学部 母子科学講座 周産期学婦人科学 金西 賢治 教授(かねにし・けんじ)
1993年香川医科大学医学部(現:香川大学医学部)卒業。
香川大学医学部周産期学婦人科学講師、
香川大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター准教授などを経て、2019年から現職。

 前身の香川医科大学の時代に、周産期学と婦人科学の二つを併せ持つ周産期学婦人科学となった。その後、香川大学との統合を受け、香川大学医学部になってからも、香川県の母子医療の向上に力を尽くしてきた。今回、教授に就任した金西賢治教授に今後の方針を聞いた。

周産期死亡率の高い県から低い県へ

 地方において、特に産婦人科分野は長年苦労を強いられてきた。香川県も例外ではなく、1970年代までは、周産期死亡率が非常に高い状況が続き、これを改善すべく大学病院に期待が集まっていた。

 「早くに周産母子センター(現:総合周産期母子医療センター)が設置されたこともあり、2016年、香川県は周産期死亡率が日本で最も低い県となりました。現在、地域の産婦人科や小児科の先生の協力も得て、東部は当院が、西部は『四国こどもとおとなの医療センター』が周産期医療の核となり、地域をカバーしています。産婦人科には、周産期領域と、がんなどの治療を行う婦人科領域と、不妊や内分泌分野の三つの柱があります。当院では不妊治療に関してはフォローできていないので、こちらは特に地域の産婦人科と連携し、協力していくようにしています」

二つの命を扱う産婦人科の魅力

 「医師になるなら、外科や救急に進みたいと思っていました。産婦人科には、手術などの外科的な側面もあり、しかも急変への対応など、救急医療的な対処も必要です。特に周産期分野は、母体と胎児の二つの命に直接関わり、しかも出産は帝王切開でも自然分娩であっても、分単位で状況が変わるので、迅速な判断と技術が求められます。そのぶん責任は重大であるとともに、やり遂げた時の喜びは非常に大きい」

 元気な妊婦は、患者として来院するわけではないが、急変や合併症によって突然患者になることもある。こうした事態をできる限り防ぎつつ、揺れ動く妊婦の心情にも寄りそう医師として、周産期分野に携わってきた。

 「出産を乗り越えて、母子ともに元気に退院する姿を見送れるのは、他科では味わえない喜びだと思います」

 これまでの研究テーマは、「妊娠高血圧症や超音波による胎児の出生前診断や胎児の神経発達」「胎児の行動の関連性の研究」など。特に近年、超音波検査が進化したことにより、胎児の器質的な検査だけでなく、機能面の評価についても、今後可能性を探っていくという。

産婦人科医の充足と地域との連携が課題

 教授として、今後の同科の課題として挙げるのは、まず1人でも多くの産婦人科医を育てることだ。

 「産婦人科の分野は幅広く、生命の誕生に関わることもできれば、内視鏡やロボット手術を究める道もあります。また、不妊治療の分野に進めば、新しい命を一緒に育む喜びもあるでしょう」

 そして、領域はさらに広がっているという。「最近は4本目の柱として女性学も注目されています。月経異常、生理痛、更年期障害など、女性の思春期から中年期、老年期に至るまで内科的にアプローチする分野のニーズも増えていますので、今後の産婦人科医の育成は大切なテーマです」

 さらにもう一つの課題は地域との連携だ。昨年「成育基本法」が制定され、妊娠・出産・育児まで継続してケアできる体制を、地域でシステム化する指針が示された。昨今、産後うつなどのメンタルケアの問題も大きくなっており、産褥期をどこが診るのかが課題になっている。

 「安心して出産できる環境を維持するために、今後も地域の助産師さんや保健師さん、医療スタッフ、その全員と協力し合える新たなシステムを構築していきたいと思います」

香川大学医学部 母子科学講座 周産期学婦人科学
香川県木田郡三木町池戸1750―1 ☎087―898―5111(代表)
http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~perigyne/

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