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生活困窮者支え 理念と経営両立目指す

生活困窮者支え  理念と経営両立目指す

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 大分県済生会日田病院
林田 良三 院長(はやしだ・りょうぞう)

1981年久留米大学医学部卒業。
三井記念病院、古賀病院、大分県済生会日田病院外科部長などを経て、2016年から現職。

 大分県済生会日田病院は、生活に困窮する人に手を差し伸べる「済生」の精神の下、県西部の医療の中核を担う。1990年の開院から30年。林田良三院長に今後の展望などを聞いた。

―日田病院の特徴は。

 日田市、九重町、玖珠町からなる県西部医療圏で唯一の公的医療機関です。「地域に足りない医療機能を補完する」という、本来は公立病院が果たすべき役割を担ってきました。また、地域の人口減や医療ニーズの変化に応じ、病床機能を急性期だけでなく回復期、慢性期()にも対応できるように多機能化を図ってきました。

 過疎化が進むこの地で、私たちは公益性の高い二つの役割を担っています。
 一つは、生活困窮者への医療提供です。これは済生会開設以来の根本理念に基づくもので、現在では無料低額診療事業として受け継がれています。2019年の全患者のうち、生活保護受給者も含め、13・4%が無料や低額での診療です。

 もう一つは、医療の枠を越えた社会福祉法人としての役割。例えば受刑者の社会復帰を支えるため、大分市の事務所にソーシャルワーカー(SW)ら6人を常駐させて相談に応じています。刑務所を出た後に一時的に身を寄せられる更生保護施設にも2人を常駐させて健康保険証の取得や病気治療をサポートします。

 もちろん、医療自体の質の高さが大前提で、がん診療は診断から治療、緩和ケアまで一貫した態勢を整えています。

―災害拠点病院としての役割は。

 院長に就任した2016年春に熊本地震が起きました。院長室に泊まり込みながら現地に災害派遣医療チーム(DMAT)や支援物資を送る中で、拠点病院として足りない点を認識。DMAT隊員の養成数を増やし、出力の高い非常用発電装置や救急車と同規格のDMATカーを購入しました。

 看護師や事務職、理学療法士などを含め、病院全体の災害対応への意識も向上し、定期的な訓練を重ねた結果、2020年7月の豪雨災害時は実効性のある対応が取れました。今後は行政や医師会との連携を深めていきたいです。

―へき地医療拠点病院としての取り組みは。

 無医地区の日田市・高花地区と玖珠町・古後地区で巡回診療を担っています。2018年の診療件数は延べ290件。過疎化に伴い診療件数は減少傾向にありますが、中山間地域に欠かせない医療サービスです。1年前からは訪問看護と訪問診療も開始。病状が不安定であるなど医療ニーズの高い人に絞り、開業医と役割分担を図っています。

 今後は新型コロナウイルス感染症で注目が高まるオンライン診療も積極的に取り入れ、へき地医療の効率化を進める方針です。

―目下の課題と対策は。

 最大の課題は医師の確保です。現在は三十数人態勢で、規模的には40人は必要ですが、中山間地域の病院が人材を確保するためのハードルは高いです。医師の高齢化が進み、特に小児科医は地域全体で手薄な状況です。働き方改革に対応するためにも、若い人材を呼び込む努力を続けます。

 経営面の改善も急がねばなりません。経営コンサルタントによる分析と提言を受けながら、診療態勢や給与制度の見直しを進めています。経営面では、行政による公的支援も考えてほしいと思います。公立病院にほぼ準じた形で運営しているのに、財政面での公的な支援は格段に薄いのです。これは全国の公的病院に共通する課題だと思います。

 無料低額診療の件数は右肩上がりで、コロナ禍による雇用状況の悪化も加わり、当院の存在感は高まると考えています。経営的安定と両立させながら、済生会としての役割を職員一丸で全うしていきます。

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 大分県済生会日田病院
大分県日田市三和643―7
☎0973―24―1100(代表)
http://saiseikai.hita.oita.jp/contents/

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