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理屈を究め、理想を実現 心臓外科の道をひらく

理屈を究め、理想を実現 心臓外科の道をひらく

 樋上  哲哉 病院長(ひがみ・てつや)
1982年神戸大学医学部卒業、同附属病院第2外科入局。
島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)教授、札幌医科大学医学部教授、
葉山ハートセンター院長などを経て、2017年から現職。

 超音波メスによる内胸動脈採取法を開発し、冠動脈バイパス手術を進化させたスペシャリスト。2年前に病院長に就任、心臓血管外科の拡充を進めてきた。循環器センターの設立計画も進む。心臓血管外科、循環器、脈管などの専門医資格も有する病院長の第一線での活躍を支える信念とは。

―昨年「」を開設。現状と展望を。

 内科と外科が協働して、ベストな治療を選択します。心臓移植以外は全部するのが目標。今年中に、そのための施設認定をすべて取得する予定です。

 高齢の患者さんが多くを占める中、当院で行うのは低侵襲で機能回復が早い手術です。心臓手術では当日夜か翌朝、ICUなどで麻酔の管を抜くのが一般的ですが、われわれは手術室にいる間に抜く。翌日には立つ練習をします。離床が早いので、肺炎などの合併症も少ない。これを支えるのがチーム医療です。麻酔科やリハビリ、メディカルスタッフもしっかり連携しています。

 現在は常勤の心臓血管外科医が4人、循環器内科は非常勤含め4人ですが、今後はどちらも常勤を6~7人に増やす予定。7月には脳神経外科でも新チームが始動します。最終目的は、心臓血管センターに脳外科部門を加えた循環器センターの設立です。目途は4年後。垂水駅周辺の再整備構想の一環で垂水養護学校跡地に移転する予定です。超急性期病院として生まれ変わることになるでしょう。

―低侵襲の術式を開発。7000例以上の心臓手術を行ってきました。

 一つは、心臓を止めずに行う冠動脈バイパス手術。バイパス用の血管には超音波メスを使って剥離した内胸動脈を用います。大事なのはクオリティー。技術的な失敗はほぼなく、10年、15年後も医療介入せずにすむ手術です。つないだ血管がどれくらい長持ちするかというグラフト開存率も非常に高い。5年後に狭心症や心不全を再発するのは2%未満。一般は15~20%ですから10分の1程度です。

 この成績は、超音波メスで取った内胸動脈を2本使うことに起因します。超音波メス自体は国内の8割以上の施設で使われていて、左の内胸動脈を使うのは基本。でも技術的に難しい右の内胸動脈を2本目に使っているのは2割程度ではないでしょうか。残りは足の静脈を使いますが、それだと10年で5割が詰まります。対して内胸動脈は10年で99%の開存率。これが一番の違いです。

 もう一つ開発したのは、ラフゾーントリミング法という僧帽弁形成術です。人工弁には寿命がありますが、自己弁温存による弁形成はしっかり行うと一生、維持できます。

 さらにこの手術を完璧に行うために考えたのが、ビーティングテスト(心拍動下逆流評価法)。術中に大動脈を遮断しながら心臓を動かし、逆流がないか確かめるというものです。これらの開発で僧帽弁形成は飛躍的に成績が向上。20年間で500件近く行ったうち、再手術は1人だけです。

 術式の開発に至る経緯は共通しています。自分の理想形があり、そこに別の手段を組み合わせてうまく融合させるイメージですね。逆に、しなかったことは人の模倣。ゴールドスタンダードは当然取り入れますが、自分で考えたことを自分で実現したい、という願望が昔から強かった。それが私の原動力です。

 若い人に伝えたいのは、「すべての手技には理由がある」ということ。理屈に合わないからトラブルが起こる。慣例でやるだけなら、見直すべきです。それを理解して実行できる人は、上達が早いですね。

 外科医が一流になるのに大事なのは、器用さじゃない。半分は努力。理屈を考え、理解して、勉強することです。4割は置かれる環境。これも大事です。才能は最後の1割。自分の頭で考え、発展させてみる、その習慣を身に付けた人なら、道を切りひらいていけるでしょう。


医療法人沖縄徳洲会  神戸徳洲会病院
神戸市垂水区上高丸1―3―10
☎078―707―1110(代表)
https://www.kobetokushukai.org/

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