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熊本県独自の取り組みで がん診療連携を推進

熊本県独自の取り組みで  がん診療連携を推進


教授(かたぶち・ひでたか)

1982年熊本大学医学部卒業。米ジョンズ・ホプキンズ大学医学部病理学研究員、
熊本大学医学部産科婦人科学講座助教授などを経て、2004年から現職。
熊本大学病院病院長特別補佐を兼任。
日本臨床分子形態学会理事長、日本婦人科腫瘍学会副理事長、
日本婦人科がん検診学会副理事長、JSAWI代表兼任。

 熊本県独自の取り組みであるがん診療連携クリティカルパス「私のカルテ」を運用し、日本癌治療学会が運営する「認定がん医療ネットワークナビゲーター制度」のモデル地域の一つである熊本県。片渕秀隆教授は、この二つの取り組みに深く関わってきた。

―わが国におけるがん対策事業について。

 私はライフワークとして「がん教育」に取り組んできました。現在、日本人は毎年約100万人ががんに罹患(りかん)し、2017年には約37万人が、がんで死亡しています。戦後間もなくの1950年は死亡者が約6万5千人。この30数年間でがんで亡くなる人は20万人以上増えました。

 今や日本人の2人に1人が、がんにかかる時代と言われています。しかし、多くの人が「自分もいつかがんになるかもしれない」という現実を実感できていないように感じています。

 ただし、がんは「不治の病」ではありません。国立がん研究センターが2019年4月に公表したデータでは、全部位全臨床病期の5年相対生存率は67.9%(2008年〜2010年)、10年相対生存率は56.3%(2002年〜2005年)。多くの人ががんと共に生きる時代なのです。

 日本でがん対策事業が本格的に始まったのは2006年の「がん対策基本法」からです。この成立にはがん患者さんの立場からその必要性を訴え、当時参議院議員でがん患者でもあった故・山本孝史氏の活動が大きな推進力となりました。

 2007年に発表された「がん対策推進基本計画」で、国と地方自治体が連携して新たながん対策事業に着手。熊本県では熊本大学病院が拠点となり、七つの病院が地域がん診療連携拠点病院に指定されました。

―「私のカルテ」とは。

 2008年に地域がん診療連携拠点病院の指定要件が更新されて、地域連携クリティカルパスの整備が求められるようになりました。その中で、熊本県独自の取り組みとして生まれたのが「私のカルテ」です。

 これは患者さんが持つ自分の病歴などを記載したカルテで「熊本モデル」として全国的に知られています。例えば、熊本県の地方に住んでいる患者さんが熊本市内にある病院で治療を受けて退院し、その後経過観察のために同じ病院に通院するとなると時間的、経済的に大きな負担となります。
 
 「私のカルテ」は拠点病院とかかりつけ医が連携するためのツール。2010年の導入からこれまでも6千人を超える患者さんに活用されてきました。これは他にはない診療連携の事例として、全国的にも高い評価を受けています。また、2016年に発生した熊本地震の際にも「私のカルテ」の有用性が認められ、その後積極的な導入が進みました。

―認定がん医療ネットワークナビゲーター制度について。

 がん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」の設置が義務づけられており、専門の相談員ががん患者さんとその家族に対するサポートを行っています。しかし、患者さんがそこにたどり着けていないという問題があります。

 そこで、日本癌治療学会が推進しているのが「認定がん医療ネットワークナビゲーター制度」です。熊本県は全国で選ばれたモデル事業3地域の一つで、私が学会内の委員長を務めています。

 ナビゲーターの役割は、治療以外にも医療費や介護、在宅医療、職場での対応など、適切な時期に適切な情報提供やサポートをすることです。ナビゲーターの資格にはジュニアとシニアがあり、全国での活躍がすでに始まっています。

 多くの人が自分はがんになると思っていない上に、がんと診断されてもどんな情報が必要かわかりません。この制度が広く周知され、がん患者さんやその家族の手助けになればと思います。

熊本大学大学院 生命科学研究部 産科婦人科学講座
熊本市中央区本荘1―1―1
☎096―344―2111(代表)
http://kumadai-obgyn.net/

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