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熊本地震を乗り越え災害に強い新病院が始動

熊本地震を乗り越え災害に強い新病院が始動


熊本市東区東町4―1―60 ☎096―365―1711(代表)
http://www.cityhosp-kumamoto.jp/

 2016年4月に発生した熊本地震で大きな被害を受けた熊本市立熊本市民病院が移転新築。2019年10月1日に開院、7日から本格的に診療を開始した。地域住民が待ち望んだ新病院とは。

◎新築を検討中に熊本地震で被災

 もともと老朽化が進み、新築計画が進んでいたという熊本市民病院。「北館、南館はすでに30年以上、耐震性や経年劣化などの問題が露呈していました。そこで現地または移転での新築が検討されていたのです」と、髙田明院長は振り返る。

 しかし東日本大震災からの復興や東京五輪の建築ラッシュで資材や人件費などが急騰し、計画の見直しを検討していたその時に、熊本地震が起きた。熊本市民病院もライフラインの寸断、建物の破損など、大きな被害に見舞われた。

 「移転先は、国家公務員の官舎が建っていた国有地。被災前の検討段階の時も有力候補の一つでした。同じ東区にあり医療圏が変わらないこと、熊本地震で大きな被害を受けた益城町からも近く、災害時の対応も考慮して新築移転先の第1候補に。国との交渉もスムーズに進み、ここへの移転新築が決まりました」

◎災害に強い病院へ

 新病院は被災による復旧ということもあり、国の補助では現状復旧が原則だった。しかし旧病院が建った40年前と今とでは、医療を取り巻く環境が大きく異なる。そこで関係機関との粘り強い交渉を行い、全く新しい病院の建設が実現する。

 「被災したからこそ災害に強い病院を目指した」という、髙田院長の言葉通り、建物は地震が発生した際に揺れを軽減する免震構造を採用。電源は非常用発電機を2台設置、浸水に備えて発電機は屋上に設置された。被災した際に受水槽が壊れて水が全く使えなかった経験から、新病院では上水道と、ろ過装置付きの地下水の二つで、水を供給できるようにした。

 木のぬくもりを感じる広々としたエントランスホールは、災害時にはトリアージおよび患者の治療スペースとして使用。緊急時にベッドにできるソファや床下には必要な各種配管を配備。また、ドクターヘリによる救急搬送に対応する屋上ヘリポートも新設した。

災害時に対応できるスペースを十分に確保したエントランスホール

 来院者の利便性も図られた。以前は狭く分散されていたことで非常に不評だった駐車場は、広い敷地を確保でき、病院前に346台分を整備。コンビニエンスストアやカフェの設置、診療時間をメールで知らせるアプリなど最新のITも導入した。

 さらに入退院患者への手術の説明や、入院期間中から在宅復帰まで支援する患者サポートセンターを新設。ここには看護師や社会福祉士など専門職を配置し、患者や家族の悩み相談も受け付ける。

◎女性と子どもに優しい病院を目指して

 旧・熊本市民病院は、総合周産期母子医療センターとしての役割を担っていた。この新病院においても、ハイリスクの妊婦を受け入れるなど、その機能を強化していく。

 さらに、女性特有の疾患やメンタルヘルスケアへの対応、遠方からの患者家族の経済的・精神的な負担の軽減を目的としたファミリーハウスを敷地内に設置(3家族が入居可能)するなど、女性と子どもに優しい病院を目指している。

院長

 「新病院の開院までの診療縮小の間、看護師など医療スタッフを九州管内の病院へ派遣研修させ、医療技術の維持・スキルアップを図るとともに、被災者支援業務に携わるなど、市職員として活躍の場を広げました。病院の外で働いたからこそ、新しい熊本市民病院でその経験を生かしたいという思いが募っています」

 地域住民の期待だけでなく、スタッフたちの熱い思いが原動力となって、新しい熊本市民病院が力強く動き始めた。

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