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沖縄特有のがんの解明と治療法のヒントを求めて

沖縄特有のがんの解明と治療法のヒントを求めて

琉球大学大学院医学研究科 皮膚科学講座 高橋 健造 教授(たかはし・けんぞう)
1986年京都大学医学部卒業。米ジョンズ・ホプキンス大学留学、京都大学皮膚科講師、
琉球大学大学院研究科皮膚科学講座准教授などを経て、2016年から現職。

 大小160の島々から成る沖縄県には、日本本土にはほとんど見られない皮膚疾患も存在する。これら疾患の原因は何なのか。日本の最南端における皮膚がん治療に取り組む、琉球大学の高橋健造氏に、最近の沖縄県の状況と課題について話を聞いた。

―沖縄の皮膚がんの現状は。

 日光露光部に発生する有棘細胞がんが多くみられます。同様に、基底細胞がんも多く発生しています。これらのがんは、紫外線が発がん因子の一つとなるので、具体的な統計をとったわけではありませんが、紫外線の強い沖縄での発症率が高いことは間違いないと思います。

 カポジ肉腫という宮古島に多く発生しているがんも、沖縄県の一つの特徴です。このがんは、ある種のウイルス感染が基盤となり発症するのですが、宮古島の方は、そのウイルスの感染率が比較的高いため、このような状況になっていることが判明しています。成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATL)も多くみられます。このがんもウイルス感染が関係していて、日本の南西部に多い傾向があります。

 沖縄における皮膚がんの最大の特徴は、血管肉腫です。このがんは、沖縄県外ではほとんど見られない非常に稀な種類のがんで、紫外線が関係しているかどうかも、いまだにわかっていません。急激に進行していきますので、ヒトの固形がんの中でも最も予後の悪い腫瘍の一つであると思います。男女比は3対1。高齢者の頭部や顔に好発し、平均存命率は2年前後です。

 メラノーマ(悪性黒色腫)も発症しますが、日本人の場合、紫外線量とは関係ない手足型が主であると考えられています。沖縄県の発症率は他の地域と比較して差はないでしょう。

―それらの治療状況は。

 有棘細胞がんや基底細胞がんは、従来通り、手術で切除します。進行期の患者さんでも、化学療法、放射線療法を施すことで済むことも多くあります。

 宮古島におけるカポジ肉腫は、それほど悪性度が高くありません。特定のウイルス感染の後に長い期間を要すると同時に、感染したからといって必ず発症するとも限りません。病態もだいぶ解明されたので、治療もスムーズにできています。

 ATLの原因ウイルスは、遠い昔から存在していると思われるウイルスで、血液感染によってうつります。これまでは減りつつあったのですが、最近では若い人の間に増えてきているようです。早期発見、治療に努めていきたいと思います。

 血管肉腫については、発症数が少なく、病態も分かっていない部分が多いので、治療法もまだ確立されていません。いろいろと試行錯誤している段階です。現時点では、放射線療法やタキサン系の化学療法を施すなどしています。今後、少なくとも放射線治療は一つのルーティーンに入るのではないかと思われます。免疫チェックポイント阻害薬が保険適用になれば、早く使っていきたいですね。

 メラノーマの治療は、最近どんどん変わってきています。本庶佑先生の発見がもととなった免疫チェックポイント阻害薬を使用することによって何人かに一人は確実に反応があり、進行を抑える効果があります。化学療法と違って、より延命効果が期待できるのです。いずれの治療に関しても、今、一番良いとされる治療法を選択し、それを確実に行う。これが私の治療方針です。

―今後の課題は。

 やはり血管肉腫の病態の解明を急ぎたいと思います。この病気は、頭部から顔面に広く進行し、急速に進行する患者さんが多いのです。

 病態が明らかになることで治療法のヒントを見つけることができるかもしれません。今後も、その点を課題として取り組んでいきたいと思っています。

琉球大学大学院医学研究科 皮膚科学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
☎098―895―3331(代表)
http://www.hifuka.med.u-ryukyu.ac.jp/

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