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沖縄の小児科医療の向上にチーム医療で取り組む

沖縄の小児科医療の向上にチーム医療で取り組む


教授(なかにし・こういち)

1989年神戸大学医学部卒業。
神戸大学医学部附属病院小児科、
米ケース・ウエスタン・リザーブ大学小児科留学、
和歌山県立医科大学准教授などを経て、2017年から現職。

 2019年4月に琉球大学医学部附属病院副病院長に就任した中西浩一教授。小児腎臓病を専門に、希少疾患の診療と臨床研究に取り組む。沖縄の離島環境における小児医療の課題や今後の方針を聞いた。

―小児科医として大切にしていることは。

 質の良い医療には、年齢や発達に応じたチーム医療が必要です。病院では看護師や理学療法士など、多職種のスタッフが一緒に取り組んでいます。保育士やボランティアのサポートも非常に大きい。お互いの立場や状況を理解し、協調しながら力を合わせていくことを心掛けています。

 特に小児科の場合は、耳鼻科や歯科口腔外科など他科との連携が要求されます。各科で対応した内容をしっかりとカルテに残し、それを確認しながらディスカッションを進めるという仕組みを目指しています。きちんとした文章をカルテに書くのは少し手間がかかりますが、チーム医療の状況を形に残すという意味では非常に重要です。

 臨床ではリサーチマインドを大切にしています。患者さんを診る中で、湧いてくる疑問を研究に結びつけ、より良い治療につなげていくこと。学生だけでなく、どのステージの医師にもそう伝えるようにしています。

―離島医療の課題は。

 基本的には沖縄で医療を完結することが目標です。沖縄のさらに離島となると、島内で医療を完結することは難しいので、現地の医師とよくコミュニケーションをとりながら一緒に診ていくというチームワークで臨んでいます。

 日々の現場では根拠に基づく医療「EBM」に力を入れています。これは単に論文に書かれた根拠に基づくということではなく、「医療資源」と「価値観」、そして「科学的根拠」の三つが基本です。

 医療資源については、沖縄の場合マンパワーや症例数など十分でない部分があります。例えば、小児の腎移植の手術は、県外に行かなければなりません。

 価値観とは、患者や家族の考え方や思いです。沖縄の人は、沖縄で医療を完結したいという思いが強い。それに応えるため、患者の価値観と受けるべき医療の落としどころをどう見つけるかが課題です。

 EBMの三つの要素をうまく機能させ、その場、その時の最善を選択する。限られた医療資源であっても患者の価値観を尊重し、質の高い医療を提供したいと思っています。

―研究について。

 私の専門は小児腎臓病。特に希少疾患のメカニズムを調べることが研究テーマです。最近では、和歌山県立医科大学と共同で進めてきた「IgA腎症」(血尿やたんぱく尿などの症状がある慢性腎炎の一種)に関する臨床試験の結果がまとまっています。

 琉球大学は、診断のつかない病気を遺伝子情報から解析する「IRUD―P(小児希少・未診断疾患イニシアチブ)」の地域拠点施設でもあります。希少疾患の多くは遺伝子の変異に起因します。IRUD―Pの取り組みを推進することで、未診断疾患や希少疾患のメカニズムを解明し、治療法の開発や創薬に結びつけたいと考えています。

 さらに、琉球大学が環境省から受託している子どもの健康と環境に関する全国調査「エコチル調査」も進めています。胎児から13歳まで健康状態を追跡し、環境が子どもに与える影響を調査するものです。

 これらの活動を通して、沖縄特有の希少疾患や環境による子どもへの影響を調べたい。沖縄では、皮膚科の疾患や神経の病気が特異的です。小児で沖縄特有の病気はないものの、まだ見つかっていないだけかもしれません。

 希少疾患のメカニズムを明らかにして創薬につなげるのは長い道のりです。そのために何ができるかを常に考えています。

琉球大学大学院 医学研究科育成医学(小児科)講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
☎098―895―3331(代表)
http://www.ryukyu-pediatrics.jp/

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